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vol.17 グランドキャニオンpart3【2011 アメリカ】

サウス・カイバブ・トレイルの出発点へはマイカーで行けないため、シャトルバスでトレイルヘッド(Trailhead)バス停まで向かいます。

サウス・カイバブ・トレイル(South Kaibab Trail)

トレイルヘッドには日本語の注意書きも掲示されています。日中は日差しを遮る場所がなく、暑さに注意が必要とのこと。地図を見る限り、コース上に給水ポイントがないようなので、水の持参は必須です。暑さを避けるためにも、早い時間の出発が推奨されているそうです。

9時20分出発、目的地のシーダー・リッジまでは2.3km。

いきなり九十九折りのトレイルが全貌を現しました。ジグザグに切られているおかげで勾配はきつくなく、下りは歩きやすそうですが、帰りの上りはそれなりにしんどくなりそうです。

このあたりの地層は白い石灰岩で形成されています。2億6,000万年前に形成されたカイバブ石灰岩層(Kaibab Limestone)で、恐竜が地球上に現れる以前の時代のものです。

九十九折りを下り終えると、なだらかにリムの先端へと続きます。露出した地層を間近に観察できるのも、トレイルならではの楽しみ。道を下るにつれて地層が変わっていくということは、地球の歴史を過去へさかのぼっているのと同じです。コロラド川まで降りると、18億年前の地層まで遡ることができるといいます。

ウーア・ポイント(Ooh Aah Point)が見えてきました。リムの先端にせり出した、眺望の良さそうなポイントで、ちょうどシーダー・リッジへの中間地点にあたるようです。

ウーア・ポイント(Ooh Aah Point)

ウーア・ポイントの名前の由来は、ここからの景色を見ると思わず「ウー、アー」と声が出てしまうから、だそうです。ネーミングの是非はともかく、リム上から見ていた景色とは次元の違う絶景に、思わず声が漏れるのは間違いなさそうです。

眼下に目指すシーダー・リッジが見えてきました。正面に立つ残丘が、オニール・ビュート(O’Neil Butte)です。

1時間も歩かないうちにこれほどの景色が広がるとは思っていませんでした。眺望の開けた、歩いていて気持ちの良いトレイルです。

グランドキャニオン・サウスリムにはもう1本、ブライト・エンジェル・トレイルというコースもありますが、サウス・カイバブ・トレイルは降り始めから眺望が良いとガイドブックに紹介されていました。まさにその通りです。

シーダー・リッジ(Cedar Ridge)

10時30分、今回の目的地、シーダー・リッジに到着。わずか1時間10分でしたが、帰りは上りになるのでもう少しかかりそうです。

シーダー・リッジから東側(上流側)の眺望です。正面左に見える尖峰がゾロアスター・テンプル(Zoroaster Temple、標高2,173m)、右奥の遠くにウォータンズ・スローン(Wotans Throne、標高2,327m)とヴィシュヌ・テンプル(Vishnu Temple、標高2,386m)。

正面に見えるのは、グランドキャニオンビレッジがあるあたりのサウスリムの断崖。シーダー・リッジの標高は1,847m、マザー・ポイントの標高が2,170mなので、目の前に見えている崖の部分だけでも高さは323m。東京タワー(333m)とほぼ同じと言えば、スケール感が伝わるでしょうか。

北西側(下流側・対岸)の景色は、太陽が正面にあるため影ができず、のっぺりとした印象になっています。

ここからはまだコロラド川を見ることができません。川は崖のさらに下を左右に流れているためです。コロラド川を望むには、ブライト・エンジェル・トレイルのプラトー・ポイント(標高1,152m)まで下る必要があり、ここからさらに700mほど低い場所になります。

そして最終地点、ファントム・ランチ(Phantom Ranch)のあるコロラド川の標高は768m。コロラド川まで下る場合、ファントム・ランチに宿泊するのが一般的だそうですが、片道11.4km、標高差1,500m弱。トレイルはよく整備されているので、日帰りで行けない距離ではありません。

11時10分。景色を堪能しているうちに、40分も滞在していました。まだまだ下っていきたい気持ちではありますが、今日中にフェニックスに戻らなければならないので、そろそろ引き返します。気温が上がってきて、暑くなってきました。

帰りは渓谷と反対側、サウスリムの壁側を見ながら歩くため、行きには気づかなかった植物が目に入ってきます。産毛に覆われた葉や茎が印象的で、わずかな空気中の水分も取り込もうとしているのでしょう。写真の赤い花は、インディアン・ペイントブラシ(Indian Paintbrush)と呼ばれる高山植物。

すみれのような紫色の花が、可憐に咲いています。乾燥したグランドキャニオンでは、花は珍しい存在です。

乾燥したコロラド高原には、サボテンがよく似合います。ユタアガベ(Utah Agave)は、中央から伸びる花茎が印象的です。数十年に一度だけ花を咲かせ、開花後に枯れるといわれています。

スイッチバックの登りが待ち構えています。さすがに気が重たくなる光景です。

サウス・カイバブ・トレイルは観光目的で整備されたトレイルで、レンジャーが巡回し、補修工事も行われていました。国立公園の入場料は必要ですが、これだけの整備費用と考えれば安いものです。日本の景勝地にも、ぜひ同様の仕組みを取り入れてほしいと感じました。

わずかな日陰で休憩している人もいます。5月初旬でこの暑さですから、夏はさぞかし過酷なことでしょう。ここを登りきれば、トレッキング終了です。

12時20分、トレイルヘッドまで戻ってきました。距離こそ短いものの、大満足のトレッキング。次回はぜひコロラド川まで下り、大渓谷をもっと深く体感してみたいと思います。

ヤキ・ポイント(Yaki Point)

トレイルヘッドから少し歩いて、ヤキ・ポイント(Yaki Point)へ。東側の景色が開けた絶景ポイントとして知られているようですが、正直もうスケール感が麻痺してきています。対岸まで16kmあるという事実が、嘘のようにすら感じられます。

ヤバパイ・ポイント(Yavapai Point)

シャトルバスでビレッジに戻り、ヤバパイ・ポイント(Yavapai Point)へ。さすがに似たような景色が続き、感動の度合いも薄れてきました。しかも13時を過ぎて陰影がなくなり、すっかり塗り絵のような風景になっています。

東西に伸びるコロラド川が刻んだグランドキャニオンも圧巻ですが、南北に伸びるブライト・エンジェル・キャニオン(Bright Angel Canyon)もかなりの規模の渓谷です。そのブライト・エンジェル・キャニオンとコロラド川の合流地点近くに、渓谷内唯一の宿泊施設、ファントム・ランチがあります。

ヤバパイ・ジオロジー・ミュージアム(Yavapai Geology Museum、地質博物館)

入口正面の窓には、セオドア・ルーズベルト大統領のメッセージが刻まれています。自然保護に熱心だったルーズベルト大統領は、大統領令で国立公園を指定できる法律を制定。グランドキャニオンは1919年に国立公園として指定されました。

博物館はグランドキャニオンビレッジの中心、ヤバパイ・ポイントの最も突き出た場所に位置しています。180度に広がる眺めは圧巻で、博物館の窓枠がそのまま額縁になってくれます。入館料は無料です。

館内にはグランドキャニオンの成り立ちや地層についての展示があります。

地層は12層に分かれており、上部が2億6,000万年前、コロラド川が流れる最下層は18億年前のもの。これほどの深さまで削り込んだコロラド川の侵食力も驚異的ですが、その侵食を可能にしたコロラド高原の隆起もまた、気の遠くなるようなスケールです。

グランドキャニオン内にはジリス(Ground Squirrel)があちこちにいて、かなり人慣れしている様子でした。

もう14時です。これからフェニックスまで400kmの移動です。

ようやくお昼ごはんのクロワッサンサンドの出番。車を停め、眺めの良い場所でいただきました。空腹だったこともあり、最高の昼食になりました。

デザート・ビュー・ポイント(Desert View Point)

グランドキャニオンビレッジからは、来た道を東へ戻ります。フェニックスへは南へ進むほうが若干近いのですが、最後の悪あがきで、最も東側に位置するデザート・ビュー・ポイント(Desert View Point)へ立ち寄りました。施設も充実しているためか観光バスが多数駐車していて、他のポイントより混雑しています。

このポイントには展望タワーがあり、他のポイントにはない特徴です。内部はお土産屋になっていて、壁には先住民族の絵が描かれています。階段を上ると展望スペースへ出られます。

デザート・ビュー・ポイントでは、コロラド川が直角に曲がっています。北側(上流)へ続く渓谷と、西側(下流)へ続く渓谷の両方を見渡せる、他にはないポイントです。人気があるのもうなずけます。

北側の眺望では、これまでなかなか見えなかったコロラド川の流れをはっきり確認できます。川が曲がる外側の崖が削られている様子もよくわかります。

西側(下流)方面には、グランドキャニオンビレッジのあるサウスリムが続きます。崖のエッジからコロラド川までの標高差1,500m、サウスリムとノースリムの平均16kmという川幅の両方を実感できる、数少ないポイントのひとつです。

ビレッジ周辺でポイントを変えても眺望はそれほど変わりませんが、ここデザート・ビューまで足を伸ばすと景色がかなり変化します。最後にここを訪れて正解でした。

フェニックスへの帰路

隆起したコロラド高原から緩やかに下っていきます。最後の国立公園を見終えて寂しくなるかと思いきや、どこもあまりにも圧倒的で、充実感と満足感いっぱいでグランドキャニオンを後にします。

国道89号線(US-89)に合流し、いったんフラッグスタッフ(Flagstaff)方面へ。右手にアリゾナ州最高峰のハンフリーズ・ピーク(Humphreys Peak、標高3,850m)を眺めながら、数kmにわたる直線道路を進みます。

フラッグスタッフで給油を済ませ、インターステート40号線(I-40)を少し西へ走り、インターステート17号線(I-17)を南下してフェニックスを目指します。最後までいい天気に恵まれました。

I-17沿いのアンセム(Anthem)というまちのウォルマートに立ち寄り、お土産になりそうなものを物色します。

郊外型の店舗だけあって、とにかく広い。食料品の値段は日本よりかなり割安で、デフレと言われている日本の物価が本当に安いのか疑いたくなるほどです。ビーフジャーキーやスパイス類をお土産に購入しました。

フェニックスまであと少し。今回のプランはガソリン満タン返し不要なのですが、残量計を見るとまだ212マイル(341km)分走れる表示。フラッグスタッフで入れすぎたようです。

この時点での走行距離は1,515マイル(2,438km)。返却時には2,500kmを超えそうです。2,500kmといえば札幌から鹿児島までの距離に相当しますが、道路は広くて走りやすく、クルーズコントロールのおかげでほとんど疲れを感じませんでした。早朝出発が多かったので眠気との戦いはありましたが。

フェニックスの都心部に入ると交通量が増え、夜間の高速道路走行はさすがに緊張しました。

フェニックス到着

20時30分、フェニックスのホテルに到着。今回の旅で頼りにしたのは、大判のユタ州・アリゾナ州の地図と、ホテル周辺をプリントした紙の地図だけ。それだけでほぼ迷わずに走り切れました。我ながら、方向感覚は優れていると確信しました。

ホリデイ・イン エクスプレス ホテル&スイーツ フェニックス ダウンタウン(Holiday Inn Express Hotel & Suites Phoenix Downtown)

最後の宿はホリデイ・イン エクスプレス ホテル&スイーツ フェニックス ダウンタウン(Holiday Inn Express Hotel & Suites Phoenix Downtown)。名前のとおりフェニックスの中心部にありますが、フェニックスという街は不思議なところで、都心らしい賑わいがありません。繁華街らしいエリアもなく、人通りも少なめ。治安は良さそうな雰囲気です。

夜も遅かったのでファーストフードを買って部屋で食べることにしましたが、正直に言うとタコ・ベル(Taco Bell)が食べたかったのです。部屋でWi-Fiが使えたので近くの店舗を調べて直行しました。

セットメニューが5ドル(425円)前後とリーズナブル。アメリカではタコスのチェーン店をあちこちで見かけるのに、日本にないのが不思議なくらいです。

最後の夕食としては少し寂しいですが、タコスは美味しい。

iphoneが見つからない…

ところが、ホテルに着いてから気づくと、iPhoneが見当たりません。Wi-Fi専用として使っていたため常に持ち歩いていたわけではなく、いつどこで失くしたのかもわかりません。前夜のホテルに忘れてきたのか、それともどこかで落としたのか。落としていたとしたら、見つかる可能性はほぼないでしょう。

取り急ぎ前夜のホテルにメールを入れましたが、すぐに返信があるはずもなく、電話で問い合わせるだけの語学力もありません。最後の最後でやってしまいましたが、旅の序盤でなかったのがせめてもの救いです。

翌朝明るくなったら車の中をもう一度よく探してみようという淡い希望を抱きつつベッドへ。しかしiPhoneの行方が気になって、なかなか寝付けませんでした。