目覚まし時計のセット時刻より少し早く目が覚めた。相変わらず便利な体をしている。
エアポートメサからのサンライズ鑑賞
標高1,371mのセドナで、さらにホテルは高台のエアポートメサの頂上にあるため、早朝の冷え込みはかなり本格的。まだあたりが薄暗いうちに車でエアポートメサへ向かった。
さすがに早い時間だけあって、駐車しているのは1台だけ。昨晩のサンセット時の満車ぶりとは打って変わった静けさ。小高いビュートを歩いて登りきるのに5分とかからなかった。到着したエアポートメサは、4大ボルテックスのひとつで、昨日歩いたベルロックと同じく男性性エネルギーを持つとされているが、4つの中では比較的穏やかなパワーだという。

5時30分。 まだ街灯すらほとんどついていないセドナの町並み。もう少し早く来て、空に浮かび上がる稜線を撮れればよかったな。

5時35分。 思いのほか風が強く、体感的にかなり寒い。ここにいるのは日本人カップルと日本人男性3人組だけ。集まった全員が日本人という、なんとも妙な状況。
「御来光」や「初日の出」という文化がある日本では、朝日を迎えることそのものに特別な意味が宿っている。夕日を惜しむことはあっても、早起きしてまで日の出を見に行くというのは、どちらかというと日本人らしい感覚なのかもしれない。
男性3人組としばらく話した。グランドキャニオンからモニュメントバレーを経由してセドナに来たらしく、しかもこの旅で2回目の訪問だという。海外旅行は時間的にも費用的にも気軽ではない。それでも再訪するほどだったということは、よほど素晴らしかったに違いない。この先、同じ景色を自分たちも見られると思うと、自然とテンションが上がってきた。

5時53分。 遠くの山から朝日があたり始める。セドナの東には岩山が連なっているため、太陽本体が姿を見せるにはまだ少し時間がかかりそう。手前も遠くも、同じ赤茶けた山肌が続いている。朝日を待つ観光客もぽつぽつと増えてきたが、それでも静かなもの。寒風に耐えながら日の出を待つというのは、欧米人の休暇の過ごし方からはかけ離れているかもしれない。

5時56分。 セドナ近くの岩山にも朝日があたり始め、赤い岩肌がさらに赤く染まっていく。刻一刻と変わりゆく色の移ろいが、見ていて飽きない。

赤い岩盤の地層が、これほど鮮やかに染まるとは。岩肌が赤いのは、砂岩に含まれる鉄分が酸化したためで、いわば大地規模の「錆び」。その色が、朝日を受けてさらに深みを増している。

6時01分。 ようやく太陽が顔を出した。寒さに耐えていた分、体に染み渡るような暖かさ。太陽のありがたみをじんわりと実感する。

太陽が昇り始めると、気球がぽつぽつと空へあがり始めた。日の出直後はまだ地面が温まっておらず、上昇気流が少なく風も穏やかで安定しているため、気球飛行に最も適した時間帯とされている。セドナでは赤い岩を見下ろす気球ツアーが人気らしい。

6時35分。 エアポートメサに朝日があたり始めてから30分以上が経ち、ようやく街全体に光が届き始めた。見渡す限り、目立った高層建造物はひとつもなく、緑の中に溶け込むように家々が点在している。セドナでは景観保護の観点から建物の高さや色彩に厳しい規制があり、街そのものが自然と調和するよう設計されているという。このあたりも、セドナが繰り返し訪れたくなる理由のひとつだと思う。

南側にはベルロックが見える。遠目にもその釣鐘型のシルエットはよくわかるが、隣に控えるCourthouse Butteは、改めて見るとひと回り以上大きい。昨日、ベルロックのトレイルを歩いたときに感じた圧倒的な存在感は、やはり間違いではなかった。
「Red Rock Country」のサンライズショーを見届け、エアポートメサをあとにしてホテルへ戻った。
スカイランチロッジからの眺望

昨日はチェックイン直後に日が暮れてしまったので、明るい時間に部屋から景色を見るのは今朝が初めて。リムビューの部屋を予約しているので眺望は期待していたが、木が視界の一部を遮っているのが少し惜しい。木さえなければ、もっと抜けた景色が見えたはず。

昨日コンビニで買っておいたサンドイッチとサラダを朝ごはんに。何層にも重なったハム入りのサンドイッチはかなりボリュームがある。日本なら1〜2枚入りがせいぜいのところ、これがアメリカというか、海外の標準なのか。ハムの積み重なりを見るたびに、以前サンパウロの市場で食べたモルタデーラを思い出す(※リンク)。あれはさすがに規格外だったが。

少し肌寒いが、外の空気が気持ちよかったのでダウンセーターを着込んでテラスへ。コンビニの朝ごはんなのに、なぜかひどく優雅に感じる。部屋にはコーヒーセットが置いてあり、ちゃんとしたドリップコーヒーが飲めた。アメリカのホテルはどこもコーヒーや紅茶セットが用意されていて、この旅では一度もコーヒーに不自由しなかった。

セドナの中でも丘の上にあるので車通りもなく、静かなエリアにあるスカイランチロッジ。昼間は隣接するセドナ空港の発着音が気になるかもしれないが、早朝のこの時間はとにかく静かだった。

自分の部屋はリムから少し離れていたが、少し歩けばセドナの町を見渡せるビューポイントに出られる。ちなみに中央の山はサンダーマウンテン(Thunder Mountain)。ウォルト・ディズニーがセドナに別荘を持っていた縁で、ディズニーランドのビッグサンダーマウンテンのモデルになったといわれる岩山。プライベートな空間ではないものの、この眺望のためにリムビューを選んだ価値は十分にあった。

フロント棟は手作り感があって温かみのある雰囲気。奥にはアクセサリーを中心にしたお土産コーナーがあり、かわいらしい小物が並んでいた。無料でコーヒーを持ち帰ることもできた。

リム沿いに面していない部屋は中庭に面していて、よく手入れされた庭はちょっとした公園のような雰囲気。口コミでも庭の美しさを挙げる声が多く、天気のいい昼間はここでピクニックするのも悪くなさそう。

規模や雰囲気はホテルとペンションの中間といった感じで、内装はシンプルなアメリカ西部スタイル。建物自体は古いが、部屋は広く清潔で、なんといっても眺望が抜群。
難点はレストランがないこと。空港に併設のレストランがあるが、朝晩は山を降りる必要があり、車なしでは不便。もっとも、アメリカは車社会なので、レンタカーがあれば大きな問題にはならない。
Sky Ranch Lodge
http://www.skyranchlodge.com/
Cathedral Rock
次の目的地、モニュメントバレーまでは車で4時間30分ほどかかる。それでもせっかくなので、セドナをもう少し観光することに。4大ボルテックスをもうひとつ。セドナのシンボル的存在、カセドラルロック(Cathedral Rock)へ向かった。

地図らしい地図は持っておらず、「地球の歩き方」の簡略図を頼りに走ってみると、あっさり到着。あまり取り柄のない自分だが、方向感覚だけは自信がある。もっともカセドラルロックは遠くからでもよく見えるので、おおよその見当はつけやすかった。

駐車場は思っていたより狭く、10台ほどのスペースしかない。ラスト1台のところに滑り込めてラッキーだった。景色を見るだけでもと思っていたが、天気もよく暖かくなってきたので、9時30分、トレッキングスタート。

往復約2.4km、標高差約200mと数字だけ見れば大したことはないが、4大ボルテックスの中で最もハードとされるトレイル。岩山をよじ登る様子が遠くから見えて、なかなか楽しそう。

鉄ワイヤーで固められた石標を頼りに岩肌を登り始めて、約10分。たった10分でこの絶景。快晴で雲ひとつなく、空の青さが突き抜けるよう。本音を言えば絵的にはうっすら雲のひとつも欲しいところだが、贅沢はいえない。日陰で年配の夫婦がじっと景色を眺めていたのが印象的だった。

ここがトレイル最大の難所。手を使わないと登れないほどの急斜面で、さっきの年配の夫婦はここで引き返したのかもしれない。道が狭く、下りてくる人とのすれ違いにも気を使う。

急斜面を登り切ると、景色がまた変わった。地面にはサボテンも顔を出していて、まさにアメリカの原風景といった雰囲気。右手に見える角ばったビュートは、昨日間近で見たコートハウス・ビュート。

さらにひと登り。頂上付近の尖峰が間近に迫ってきた。これまで歩いてきた柔らかそうな砂岩とはまるで違う、かなり硬質な岩肌。あれだけ削られずに残っているのだから、相当な硬さがあるのだろう。

最後の斜面は土が崩れやすく登りづらい。両サイドから岩山が迫ってくる感覚。ここを登りきればゴール。

登りきった先に、南側の景色が一気に飛び込んできた。両サイドの岩山が額縁のようにフレームをつくり、遠くの景色をさらに引き立てている。足元はここを境に急激に落ち込んでいて、この先にトレイルはない。トレッキングとしてはここがゴール。のんびり登って所要時間は40分。この先はロッククライミングの領域。

右手の崖のふちまで、おそるおそる歩いてみた。落ちたら終わり。

アメリカの観光地は柵を設けず、できるだけ自然のままの状態で見せようとする。日本ならここに必ず柵があるはず。ただし、柵がなかったからこそあの写真が撮れた。自然の迫力をそのまま体感できるのがアメリカ流で、その代わり安全は自己責任。この旅の後のことだったが、日本人観光客がセドナで滑落して亡くなるという事故も起きていた。

20分ほど景色を堪能してから、下り始める。下りは意外と苦労した。明確なルートがないため、右手の出っ張りの方へ進んだところ、まったく違うルートに迷い込んでしまった。登りより下りのほうが迷いやすいのは確か。

足元のサボテンにも要注意。立派な棘が待ち構えているので、安易にルートを外れると痛い目に遭う。この旅はこのあと北上していくので、サボテンを見たのはここが最後だった。

もとのトレイルに戻ると、この時間になると登ってくる人が増えていた。すれ違いざまに見ると、みんなタンクトップ。太陽は出ているが結構涼しいのに、欧米人はやっぱり暑がりなのか。

ガイドブック通り、1時間30分でスタート地点に戻ってきた。なかなか楽しいトレイルで、ほどよい運動の充足感もあって大満足。

「Cathedral Rock」
カセドラルロックは4大ボルテックスのひとつで、女性性のエネルギーを持つとされている。ベルロック、エアポートメサ、そしてカセドラルロックと、この旅でセドナの4大ボルテックスのうち3つを訪れたことになるが、残念ながら何も感じなかった。たった1泊、駆け抜けるような旅では、感じる余裕さえなかったのかもしれない。
セドナには街中のいたるところにトレイルがある。数日かけてのんびり歩き回るのが、本来の楽しみ方なのだろう。街自体もゆったりした空気が流れていて、パワースポットというよりヒーリングスポットとして訪れる場所、という表現がしっくりくる。
わずか18時間のセドナ滞在。東日本大震災の影響で欠航となった便の代わりに日程を1日前倒しにしたことで生まれた時間を、セドナに充てた。結果としては大満足。もう11時。そろそろ次の目的地へ出発しなければ。
オーククリークキャニオン〜フラッグスタッフ
セドナの中心部「Y」からSR-89Aを北上すると、商業施設の集まったにぎやかなエリアが続いていた。昨晩の夕食をここで食べればよかったと少し後悔。ガイドブックにセドナの飲食情報がほとんど載っていなかったので仕方がないが。昼食にはまだ早く、みやげ物にも特に興味はないので、そのまま北上を続ける。

オーククリークにかかるミッジリー橋(Midgley Bridge)。1939年完成の歴史あるスチールアーチ橋で、渓谷とレッドロックが一体となった眺めが格別。橋の上からセドナ方向、南側を振り返ると赤い岩山の連なりが目に飛び込んでくる。周辺にはトレイルもあり、川まで降りていくこともできる。暖かくなってきたこともあって、水辺で遊んでいる家族の姿も見えた。

地層ごとに色が異なる断面が見事で、南側に向かってなだらかに傾いているのがよくわかる。長い年月をかけてゆっくりとずれ落ちていきそう。

左手にスライドロック州立公園を眺めながら、徐々に標高を上げていく。渓谷沿いの道が終わると急カーブの連続。登りきった先にセドナを見渡せるビューポイントがあったが、駐車スペースが満車で通り過ぎるしかなかった。平日にもかかわらず、家族連れで賑わっていた。
渓谷沿いの道が終わると、北端でヘアピンカーブが連続するスイッチバック区間に入る。セドナから約600m登り切った標高約1,976mの地点に、オーククリーク・ビスタという展望台があったが、駐車スペースが満車で通り過ぎるしかなかった。平日にもかかわらず、家族連れで賑わっていた。

峠を越えると景色ががらりと変わり、ひんやりとした空気に変わった。平坦な道になり、高原の真ん中を走っているような感覚。しばらく走ると、昨日フェニックスからセドナ付近まで北上したI-17に合流し、フラッグスタッフで下りる。

フラッグスタッフの街に入ると交通量が増えた。I-40が東西に走り、北西にグランドキャニオン、南にフェニックスへとつながる交通の要所。案内標識に「Los Angeles」の文字を見つけて、なんとなくうれしくなった。
標高約2,100mの高原の町、フラッグスタッフ。日本の長距離選手が高地トレーニングに訪れることでも知られている場所で、酸素が薄い高地での練習が持久力向上に効果的とされている。
US89

フラッグスタッフの街を通り過ぎ、US-89を北上。この先に大きな町はなく、交通量がぐっと少なくなった。
高原地帯をまっすぐに伸びる道。緩やかな下りが延々と続くのだが、その先に見える道は地平線まで続いている。これぞ思い描いていたアメリカの道、そのものだった。
前述しましたが、クルーズコントロールが本当に便利。アクセルを踏まずに一定速度を保てるので、長距離でも苦にならない。周りのドライバーも同じように制限速度に設定して走っているようで、前の車に追いついたり、追い抜かれたりすることもほとんどない。
片側一車線になると、気をつけるのは追い越しのタイミング。対向車がかなり遠くに見えていても、お互い70マイル(約112km)で走っているので、あっという間にすれ違う。それだけのスピードで走っている車を追い越すのはかなり難しい。アメリカのドライバーは、よほど見通しのよい場所で対向車がいないと確認できるときしか追い越してこない。遅い車を煽るようなこともない。
道は整備されていて景色も申し分ない。いろんな意味で、アメリカの道は終始気持ちよく走れた。

AZ-64との分岐を過ぎると、1本の川を渡った。リトルコロラド川。コロラド川の支流で、左(西)に下っていくとコロラド川本流と合流し、その先にグランドキャニオンがある。
グランドキャニオンまでは1時間ほど。今回の旅で最も期待している場所だけに、あえて最後にとっておくことにした。最初に見てしまうと、他の場所の雄大さが霞んでしまいそうな気がして。
今回のグランドサークルの旅は、グランドキャニオンを除けば、このあたりから反時計回りに一周し、再びここへ戻ってくる行程になっている。

US-89からUS-160に入り、北東方向へ。周囲の土の色が少しずつ変わり始め、起伏も出てきた。
フラッグスタッフを過ぎてからは、町どころか店すら見当たらない。アメリカの広さは、日本人の想像をはるかに超える。昼時にフラッグスタッフで食べておけばよかったと思いつつ先へ進んだが、次の町テューバシティ(Tuba City)に着いたのは1時間半後だった。
テューバシティはナバホ族の自治領土「ナバホ・ネーション」内にある人口約8,600人の町で、住民の9割超がナバホ族。US-160に入った時点からすでにナバホ・ネーションの中に踏み込んでいたことになる。このあとのモニュメントバレーも同じナバホ・ネーション内にある。
本場のKFCでランチ

気軽に入れるマクドナルドにしようかと思ったら、なぜか大混雑していたので、近くのKFCへ。日本でもおなじみのチェーン店ばかりで、店選びに迷わないのはありがたい。
14時でかなりお腹が空いていたので、チキン3ピースのセットを注文。ところが出てきたのはチキンが2ピースしか入っていなかったので、店員に伝えに行くと、かなり無愛想な対応。正社員らしき人が出てきてからようやく解決したが、サービスはいまひとつ。マクドナルドとの客足の差に、なんとなく納得した。
セットの内容はチキン3ピース、コールスロー、マッシュポテト、バターミルクビスケット、そしてビッグサイズのドリンク。これで8ドル(680円)は安い。レギュラーかクリスピーかチキンのタイプを選べるスタイルで、ボリュームはかなりのもの。空腹のせいもあるかもしれないが、全部平らげてしまった。本場で食べるファーストフードは、なぜかひとしおおいしく感じる。
初めての給油
お腹が満たされたところで、再び出発。

若干起伏があるので厳密には地平線とは呼べないかもしれないが、視界に入る範囲の道路が延々と続いている。建物や山が必ずどこかに見える日本と比べて、何もないことそのものが風景として新鮮に映る。

最初エコノミークラスの小さい車を考えていたが、やはり少し大きめのSUVにして正解だった。視点が高く見晴らしがよいし、高速走行が大半を占めるこの旅では、排気量が大きいほうが意外と燃費がいい場合もある。
カイエンタ(Kayenta)の町からUS-160を外れ、US-163を北上。この先しばらく大きな町がなさそうなので、早めに給油しておくことにした。

初めてのガソリンスタンド。クレジットカードを給油機に通したが、やはり認識しない。これは事前に知っていたことなのだが、アメリカの給油機には不正利用防止のためZIPコードの入力するシステムが導入されており、日本発行のカードは給油機での支払い自体ができない。店内に入ってポンプの番号を伝え、カードを預けて給油し、終わったら精算してカードを返してもらうという流れになる。カードを預けるのは少し心配だったが、特に問題はなかった。カードを預けるのが心配なら、現金を預ける方法もある。
