
チェックインだけ済ませてホテルに荷物を置き、すぐに出発。ブライスキャニオン国立公園(Bryce Canyon National Park)のゲートです。アニュアルパス提示でそのまま入園。

野生の鹿が、道路際まで草を食べにきていました。
サンセットポイント
ブライスキャニオンには複数の展望ポイントがあります。最初に向かったのはサンセットポイント(Sunset Point)。名前のとおりなら夕暮れ時が映えそうですが、「地球の歩き方」にはサンセットポイントとは別の場所が夕景のおすすめとして紹介されていたので、まずはここへ来てみました。

道中は眺望がまったくないぶん、展望ポイントに立った瞬間の開放感がすごい。無数のフードゥー(hoodoo)と呼ばれる尖塔群が眼下に立ち並ぶ光景は、文字どおり圧巻です。
渓谷を見下ろす位置から眺めるため、尖塔群の奥まで視界が広がり、遠景まで鮮やかに見えます。右下あたりにそびえているのが、雷神のハンマー(Thor’s Hammer)と呼ばれる岩。高さは46mほどあるといわれています。

地層によって岩の色が変わっていて、渓谷が侵食によって形成されたことは見ただけで直感できます。渓谷内はフードゥーが迷路のように立ち並んでいますが、いくつかのトレイルが整備されていて、内部を歩くことができます。

サンセットポイントからは、人気No.1のナバホループトレイル(Navajo Loop Trail)へ下りることができます。ただ、1ヶ月ほど前に落石によるトレイルの崩落があり、立入禁止に。九十九折りの道が右下に見えているだけに、残念。
クィーンズガーデントレイル

せっかくここまで来たのだから、歩かずにはいられない。代わりにクィーンズガーデントレイル(Queen’s Garden Trail)を歩くことにしました。サンライズポイント(Sunrise Point)近くにトレイルの入口があります。往復2.9km、標高差137mのコースです。

標高2,400mの高地とあって、かなり肌寒く、ダウンジャケットを羽織っての出発。それでも空気が澄んでいて気持ちよく、見晴らしも申し分ありません。尾根を伝いながら下っていくので、行きは楽なもの。帰りに標高差137mを登り返すことを考えると、それなりにしんどそうです。

言葉は要りません。自然の造形美に、ただ脱帽するばかり。

尖塔と尖塔の間は、たいていこのように谷になっています。侵食された砂が流れ出てできた地形です。

尖塔の間は、だいたいがこのように谷になっています。
侵食された砂が流れていってできたのでしょう。

岩に2つの穴が開いています。この穴が縦に広がっていけば、いずれは2本のフードゥーになるのでしょう。
ブライスキャニオンのできるまで。
グランドステアケース(Grand Staircase)の中でも、ブライスキャニオンの地層は比較的新しい。今から6,000万〜4,000万年前、この一帯は「レイクフラッグスタッフ(Lake Flagstaff)」と呼ばれる大きな淡水湖に覆われていたとされています。湖底に堆積したシルトや炭酸カルシウムなどの鉱物が固まり、クラロン累層(Claron Formation)と呼ばれる石灰岩の地層を形成。
その後、コロラド高原の隆起が始まり、地層が地表に露出。年間200回以上に及ぶ凍結と融解のサイクルが、岩の亀裂に入り込んだ水を凍らせ、膨張させ、少しずつ岩を割り広げていきます。これが「霜解け侵食(frost wedging)」と呼ばれるプロセス。まず壁状の「フィン(fin)」ができ、さらに侵食が進むと穴(ウィンドウ)が開き、やがてフードゥーと呼ばれる独立した尖塔へと変わっていくといわれています。
薄い板状のフィンの横を通り抜けます。これがフードゥーになる前の姿。先ほどの「2つの穴が開いた岩」とこの写真が、まさにその過程を映し出しています。

僧侶のような形をした白いフードゥー。青空とのコントラストが美しく、太陽光を浴びて眩しいほどに輝いています。

実際にはこのぐらい大きいです。
現れる尖塔の形はどれも違っていて、岩の美術館を歩いているようです。

カーブを幾重にも越えながら、迷宮へ誘い込まれるようにトレイルは下へ続きます。

まるで高層ビル群。間近で見ていた尖塔の先端も、次第に見上げる高さになってきました。中央部には整備されたトレイルが続いています。

トンネルが2ヶ所ありました。岩肌の様子を見るかぎり、人工的に掘ったのではなく、自然にできた穴を活かしてトレイルを整備したもようです。

クィーンズトレイルの最深部。奥に見えているのがクィーンズキャッスル(Queen’s Castle)。高さは20m近くありそうです。岩と岩の隙間をぬうように、樹木がまっすぐ天へ向かって伸びています。
侵食で崩れつつあるフードゥーのはかなさと、わずかな空間で空へ向かって伸びる樹木のたくましさ。いい対比です。

来た道を引き返します。季節的にまだオフシーズンなのか、ほかにトレイルを歩いている人はまばらでした。

それにしても、空の青さが気持ちいい。標高の高さが影響しているのでしょうか。

帰りの登りも、尖塔群を眺めながらなので苦になりません。展望台から眺めるだけとはまったく別世界です。ブライスキャニオンに来るなら、ぜひ歩いてほしい。
インスピレーションポイント

「地球の歩き方」で夕陽スポットとしておすすめされていたのが、インスピレーションポイント(Inspiration Point)。駐車場から少し歩いて登った先にあります。
18時30分。標高2,469mの高地とあって、かなり冷え込んできました。気温は測っていませんが、氷点下になっているのは間違いなさそうです。あたりにはほとんど人がいません。

展望台は崖からせり出すような位置にあり、サンセットポイントより高台から見下ろす形になります。眼下に広がるフードゥーの並びは、さっきよりも整然としていました。

反対側(南側)に目を向けると、ローマ時代の円形劇場のように放射状にフードゥーが広がっています。中央左あたりの尖塔群は並びが特にきれいで、まるで尖塔を次々と生み出している工場のよう。

崖の斜面が東向きで、西日は高台に遮られてしまうため、尖塔が夕陽で照らされることはなさそうです。残念ではありましたが、目の前のこの風景に贅沢は言えません。

中国人グループが賑やかにやってきましたが、寒さに負けたのかあっという間に去っていきました。写真に写っているのは、日本人ご夫婦です。ほぼ貸し切り状態の時間が続きました。みんな名前どおりサンセットポイントから夕陽を見ているのかもしれません。

西の稜線へと太陽が沈んでいきます。標高が高いぶん、太陽が沈んでも地平線に落ちるわけではなく、空がなかなか染まりません。

ようやく遠くの山が茜色に染まりはじめました。ただ、眼下の尖塔たちはすでに暗がりに包まれはじめています。

20時20分。1時間近く氷点下の中で粘りましたが、さすがに撤収。期待していたサンセットショーは見られませんでした。ガイドブックには「オレンジ色に染まる」とありましたが、方角と地形を考えると、そもそも染まる条件ではなかったようです。
ブライスビューロッジ

恐ろしいほど空気が澄み渡っています。標高が高く空気が澄んでいるだけに星空もきれいなのでしょうが、とにかく寒くて、見上げる気力がわいてきません。

一度ホテルに戻って、熱いシャワーで体を温めます。
今回の旅で最も安かった宿が、このブライスビューロッジ(Bryce View Lodge)。ロッジという名前から正直あまり期待していなかったのですが、部屋は広くて清潔で、シャワールームも十分な広さがあり、いい意味で驚きました。
国立公園の近くでこの料金は破格です。1部屋67ドル(5,700円)。ブライスキャニオンは標高が高いぶん、この時期はまだオフシーズン料金が適用されていたのかもしれません。公園内にもホテルが1軒ありますが、ここから車で10分ほどの距離なので、あえて公園内に泊まるメリットはあまりなさそうです。

近くにベストウエスタン・ルビーズイン(Best Western Ruby’s Inn)があり、ギフトショップとジェネラルストアが併設されています。キャンプゾーンもあることから食料品の品揃えも充実していました。レストランもありますが、閉店間際だったため、部屋で食べることに。体が冷えきっていたので、暖房を効かせた部屋でゆっくりしたかったのです。

そこで見つけたのが日清のカップラーメン。まさかアメリカの国立公園近くで出会えるとは。久しぶりの味に、日本食を食べているような気分です。体は冷えていても、ビールはやはり美味しい。
少し外へ出て夜空を眺めてみましたが、ホテル周辺では明かりがあるせいか、それほどでもなかった。さすがに寒くて車を動かす気にもなれず、早々に引き上げました。
それよりも、明日の朝日鑑賞が楽しみです。最大限の防寒をして、6時前には出発したいと思います。
