
再びシャトルバスに乗り、ザイオン・ロッジ(Zion Lodge)バス停で下車。公園内で唯一のホテルやレストラン、ショップが集まるエリアで、多くの人で賑わっています。
なかなか予約が取れないことで知られるホテルですが、マイカーが入れない場所、しかも国立公園のど真ん中に泊まれるというのは、かなりの優越感があります。ホテルの宿泊者はここまでマイカーで乗り入れられるようです。

ザイオン・ロッジから見えるあの尖った岩山が、エンジェルス・ランディング(Angels Landing)。標高1,763m、トレッキングルートの終点に位置し、最後は鎖を伝って登るスリリングなルートとして知られています。そのぶん眺望は素晴らしいといいますが、行くにはかなりの度胸が要りそうです。今回は時間も度胸も足りないので、パスすることに……。

持参した最大望遠レンズで岩山を覗いてみると、人影が見えました。さっきの岩山の右上あたりに、小さく確認できます。
ロウワー・エメラルドプールトレイル

天気もよく気持ちがよかったので、ロウワー・エメラルドプール・トレイル(Lower Emerald Pool Trail)という手ごろなコースを歩くことにしました。バージン川を渡り、対岸へ。

川を越えてから奥(北側)へ進んでいきます。気温は日本の春のようなちょうどよい暖かさ。昨夕のブライスキャニオンで凍えていたのが、まるで嘘のようです。

新緑がとっても気持ち良い。

手軽に歩けることから人気のルートのようで、たくさんの人が歩いていました。

トレイル沿いにジリス(地リス)が顔を出しています。まったく人間を恐れていません……というより、餌をねだっているようです。

そのおかげで写真は撮り放題ですが、生態系への影響を考えると、少し複雑な気持ちにもなります。

さわやか。

緩やかに登りながら、バージン川の支流沿いにエメラルドプールを目指して奥へと進んでいきます。

ロウワー・エメラルドプール(Lower Emerald Pool)に到着。湾曲した一枚岩の上、数か所から水が流れ落ちてきています。ちょっと神秘的な雰囲気の場所ですが、たまっている水はエメラルド色ではなく、茶色がかっていました。

滝と呼ぶには水量がかなり少ないですが、散った水滴に光が当たって、きれいでした。

少し登って滝の上へ。眺めが本当に最高で、のんびりしたいところですが、ここは撮影スポットでもあるので、邪魔にならないようにすぐ退散。
手前には川が流れており、子どもたちが水遊びをしていました。ここから流れ落ちた水が、あの滝になっているのです。

さっきのジリスとは違い、こちらはより野生的。人間には目もくれず、崖の先にじっと立ったまま動きません。

アッパー・エメラルドプール(Upper Emerald Pool)へはもう少し時間がかかりそうだったので、カイエンタ・トレイル(Kayenta Trail)に入り、次のバス停まで歩くことにしました。少し高台から眺めるだけで、また景色がぐっとよくなります。

ところどころに花も咲いており、春の訪れを感じさせてくれます。赤い筒状の花はスカーレット・ジリア(Scarlet Gilia)。ザイオンの春を彩る代表的な野草のようです。

カイエンタ・トレイルから見えてくるのが、ザイオンのシンボル的存在、グレート・ホワイト・スローン(Great White Throne)。標高は2,048m、渓谷の底からの比高は720mで、東京タワー2本分以上の高さにあたります。

ザ・グロット(The Grotto)バス停まで歩いて、この日のトレッキング終了。道を通るのはシャトルバスだけなので、とても静かでのんびりとした時間が流れています。

ウィーピング・ロック(Weeping Rock)のバス停。15分ほど登ったところに、岸壁から水がしたたり落ちる場所があるといいますが、往復30分の時間が惜しく、次へ進むことにしました。マウントカーメルハイウェイでのんびりしすぎたツケが、ここにきて回ってきました。

次はビッグ・ベンド(Big Bend)のバス停。名前のとおり、大きく湾曲した岩の麓にあります。岩のカーブと川のカーブが平行に弧を描いており、この深い峡谷を刻み込んだのはバージン川の侵食の力。水というのは、本当にとてつもないパワーを持っていますね。

南側を振り返ると、奥にグレート・ホワイト・スローン(2,048m)が見えます。手前の岩がザ・オルガン(The Organ、標高1,550m)、右側にせり上がっているのがエンジェルス・ランディング(1,763m)。地層の違いが高さによって変わるようすが、岩の色のグラデーションとしてはっきり読み取れます。

ザイオンのシンボル的存在、グレート・ホワイト・スローン。まさに巨大な白い玉座です。この岩壁をクライミングする人もいるといいます。
シャトルバスに乗り、いよいよ最深部の終点バス停へ。
リバーサイドウォーク

ザイオン内を走るシャトルバスの終着点、テンプル・オブ・シナワバ(Temple of Sinawava)に到着。

ここからリバーサイドウォーク(Riverside Walk)という片道1.6km、往復約3.2kmのトレイルを歩きます。往復するしかないので1時間はかかりそうです。

テンプル・オブ・シナワバ(Temple of Sinawava)。シナワバとはパイユート族が信仰するコヨーテの神の名前といわれており、大聖堂の中にいるような荘厳な雰囲気からこの名がつけられたそうです。峡谷がかなり狭まってきているため、景色を見上げる角度もどんどん急になっていきます。

舗装されたなだらかな道が続きます。車椅子でも入れるバリアフリー設計のトレイルです。

川幅が狭まるにつれて水の勢いがぐっと増し、水も濁っています。

谷底まで日差しが届かなくなってきました。もうすぐ終点です。

ザイオンで最も人気の高いザ・ナローズ(The Narrows)のトレイル。文字どおり峡谷の狭い部分を川の中を歩くルートで、左右の峡谷の高さは最大600m、最も狭いところでは川幅がわずか6mしかありません。そして水の中をじゃぶじゃぶと歩くようだが・・・

しかしこの日は水量が多く、立入禁止。もともと歩く予定はありませんでしたが……。川幅が異常に狭いため、ひとたび雨が降ると水量がすぐに増えるらしく、雷が鳴っただけで立入禁止になることもあるそうです。また、真夏以外の時期は水が冷たいためおすすめされていないようです。

岩の間から滴る水のおかげで植物が育っています。壁面に咲いていたのは、花びらが後ろへ反り返り、まるでバドミントンのシャトルのような形をした薄紫の花。ザイオンの湿った岩場に自生するシューティングスター(Shooting Star)。

またジリスが登場です。これはもう完全に食べ物を欲しがっています。ますね・・・

かわいいので何か持っていたら、うっかりあげてしまっていたかもしれません。

ありのままの自然を見せるアメリカの国立公園。ちょっと見上げると、今にも崩れてきそうな岩肌もそのままです。

えぐれた部分は風食があまり進んでいないため、凹凸がとても鋭利で、岩の模様もきれいに出ています。

シャトルバスに乗り、ザイオン・ヒューマン・ヒストリー・ミュージアムまで戻ってきました。まだ明るいですが、これからペイジ(Page)の町まで185km移動しなければならないので、そろそろ出発です。
ザイオンマウントカーメロハイウェイ(復路)

スイッチバックの道を再び登り、トンネルをくぐって、ザイオン・マウントカーメルハイウェイを東へ戻ります。

この道の景色は本当に素晴らしく、走る時間帯にも恵まれました。来るときは東から西へ、帰りは西から東へ——太陽の光が順光で岩肌を照らしてくれる時間帯に、それぞれ走ることができたのです。

だいぶ日陰になってきました。

再びチェッカーボードメサが見えてきました。これでザイオン国立公園ともお別れです。
岩だけでなく、川が流れ、緑も豊か。今回訪れた国立公園の中では、一番「国立公園らしい」国立公園でした。時間がなく駆け足での滞在になってしまいましたが、それでも来てよかった。一度はスケジュールから外しかけていただけに、なおさらそう感じます。

グランドステアケースの階段状地形がきれいに現れています。見えているのはブライスキャニオンと同じ地層。この先、目指すペイジの町まで、広大なグランドステアケース・エスカランテ国定公園(Grand Staircase-Escalante National Monument)の南縁沿いを走っていきます。
US-89号線(国道89号線)

US-89号線と再び合流。今日の宿泊地ペイジまでは、ずっとこの道が続きます。マウントカーメルジャンクション(Mount Carmel Junction)の町で給油。
何もない高原地帯を走り続けますが、ここも南側へ向かって緩やかに傾斜しています。グランドキャニオンまで続くグランドステアケースの一部。スケールが大きすぎる。

東から南へ進路を変えると、また地形が変わってきました。さっきまで見ていた高原地帯の南端に差し掛かったようです。西日がだいぶ赤みを帯びてきました。

カナーブ(Kanab)の町を通過。赤茶色の岩肌に「K」の文字が刻まれています。カナーブの頭文字でしょうか。お店はあるものの、人の姿がほとんど見当たりません。日曜の夕方、みなさん家でゆっくりしているのかもしれません。

カナーブの町を過ぎ、再び東へ進路を変えます。近くに大きな町もなく、日曜の夕方ということもあって交通量はとても少なめです。

延々と真っすぐな道が続きます。やはり地面は南側へ緩やかに傾いており、その先にはグランドキャニオンがあります。

とうとう日が暮れてしまいました。目的地のペイジまで、まだかなり距離がありそうです。

平らな大地が続いていましたが、尾根のような高まりに突き当たりました。その割れ目をしばらく南下してから、US-89は再び東へ曲がります。
ちなみにここをまっすぐ南下すると、テレビでもよく取り上げられる岩の波模様が美しいザ・ウェーブ(The Wave)エリアへたどり着きます。ただ、保護のため1日20人しか入ることができません。事前抽選枠が10人で4ヶ月前から受付が始まり、当日抽選枠も10人あります。朝来て抽選に外れた場合のリスクを考えると、なかなか踏み切れませんでした。
US-89沿い、オールドパリア(Old Paria)周辺。突如として道路わきに現れた岩山。走っていて本当に飽きることがありません。

マーブル模様のような岩山も見えてきました。夕暮れ前の明るい時間帯なら、車を止めてでもじっくり眺めたい、不思議な景色です。
ペイジ(page)

深夜0時前、ペイジ(Page)の町に到着。それほど大きな町ではないので、ホテルはすぐ見つかりました。チェーンホテルのスーパー8(Super 8)です。

部屋はかなり広め。眺望とは縁のないエリアですが、1部屋77.6ドル(6,595円)で朝食付きというのは、なかなかお得です。
Glen Canyon Steakhouse

荷物だけ置いて、夕食を探しに出かけました。レストランもそれほど多くなく、探しているうちに閉店されても困るので、交差点で目についたグレン・キャニオン・ステーキ・ハウス(Glen Canyon Steak House)へ。1957年創業の老舗ステーキハウスです。店内は混雑していて、繁盛しています。

サラダバーとスープバーが無料でついてきます。頼んだスープはほぼビーフシチューのような濃厚さで、とても美味しい。

欲張って、Tボーンステーキ(23.95ドル・2,036円)を注文。骨を挟んでヒレとストリップロイン(サーロイン)の両方が楽しめるカットですが、骨から外すのが少し面倒です。

でも肉は本当に美味しい。和牛の霜降りよりも、よほど「肉を食べている」という満足感があり、食べ飽きません。USビーフって、意外とやわらかいのですね。
付け合わせを選べたのですが、メニューに「Rice」の文字を発見。久しぶりのご飯にわくわくしていたら、まったくの別物でした。インディカ米のパサパサした味付けご飯。これは失敗でした。
明日はいよいよアンテロープキャニオンです。
