暗闇のフェリー
寝台は思ったより快適だった。時より揺れはあるのだが、その硬いしっかりとしたベッド、清潔なシーツでも睡眠は快適だった。朝の5時には目が覚めただろうか。寝ている間にもいくつか駅は停まっている。下車予定の駅に着いたのにまだ寝ている乗客も多いいたのだが、ちゃんと車掌が起こしにくるのには感心させられた。そのときの乗客の反応を見ているとおもしろく、みんな飛び出ていくように降りていった。まだ外は暗い中、定刻どおりの朝6:00にバタワースに着いた。


「WELCOME BUTTERWORTH」の看板が迎えてくれる。人の流れにそって歩いていくと、5分ほどでフェリー乗り場についた。あいにくフェリーが出たばかりだったが、10分ほどで次のフェリーがやってきた。このフェリーは交通の要所バタワースとペナン島のジョージタウンを結ぶフェリーで、重要な航路となっている。フェリーの1階部分が車とバイク、2階部分が人が乗るようになっていて、車の利用も多いようである。ペナン島へはペナンブリッジもあるのだが、通行料が高いのだろうか、あまり使う人がいないようだ。フェリーの改札は自動改札だ。自動改札といっても新しいものではなく、コインを入れるとランプが赤から緑に変わり、自分の力でゲートのバーを回して通るといったものである。料金は片道で0.6RM(20円)と安く、帰りは無料である。


フェリーは出航した。南側には、ペナンブリッジの明かりが綺麗に連なっている。流れる風がとてもここちよい。向かいにはジョージタウンの街が見え始めると、次第に空は明るくなってきた。いよいよペナン島である。実はペナン島には1年半前にツアーで行こうと思っていたのだが、飛行機が満席でとれず行けなかったという思い出があった。まさかこういうかたちで、ペナン島に来るとはそのときは想像も出来なかった。ここで泊まる宿のことを悩んでいた。ペナン島はビーチリゾート地であるが、あまり海は綺麗ではないようである。ビーチ沿いにも安宿はあるのだが、そうすると奮発してプールのあるホテルに泊まってみようとか、あるいは海が綺麗でないのならジョージタウンの街中の安宿という手もあるし。選択肢がとても多かったのである。どの案もすてがたい。そうこう考えているうちに、フェリーはジョージタウンのフェリーターミナルへ到着した。
早起きペナンの人々。


ペナン島についたのは朝のまだ6:30。外は明るくなったのだが、どこの観光地も空いていないだろうし、店も開いていないだろう。とりあえず街を歩いてみることにした。北のほうへ向かうと時計台があり、その先にコーンウォリス要塞があった。


要塞はまだ開園しておらず外からの見ていたが、その周辺は公園になっていて、海岸沿いには遊歩道があった。まだ7時だというのに、華人の姿が目に付く。さすがに早起きが得意らしく、公園内で太極拳をしていたり、おしゃべりしていたり、新聞を読んでいたりしている。ここペナン島は華僑が多いようである。


空も一段と明るくなりつつあり、夜の空と朝の空が混じった空の景色は、南国の空を感じさせるものだった。その後、街の中を歩いていった。


綺麗な白壁の旧市庁舎を過ぎて、マスジッド・カピタン・クリン通りを歩いていった。観音寺の前ではトライショーのおっちゃんが乗ったまま寝ていた。夜通し運転していたのだろうか?残念ながらカピタン・クリン・モスクは改装中で中に入れることができなかった。その先にはペナン島1の安宿街チュリア通りだ。どっちかというとゲストハウスはあまり綺麗といえないものが多いようだ。それでも通りにはインターネットの店や、バスのチケットを売る店などが多い。


チュリア通りを少し折れると、朝市のような風景が通りに広がっていた。島だけに新鮮な魚を売る屋台が多くみられ、ほかにも野菜を売る屋台、通りの店では食堂でおかゆや麺が売られていた。その活気は朝とは思えないものだった。なんせまだ8時前。華僑のパワーを思い知らされるようであった。こんなに朝の早い華人に生まれなくて良かったと、なぜかホッとしていた。
安宿から、リゾートホテルへ。
ここでひとつの決断をした。宿の件だが、ジョージタウンのコムタタワーの先15分ぐらいにわりと綺麗なYMCAユースがあるようなので、そこに泊まる事にした。ペナン島の観光へはコムタタワーがバスの発着場で便利だし、明日のことも考えるとゆっくりできそう。これからチェックアウトして、ビーチに行って少しのんびりすればいいかなと思った。
コムタタワーの下でもう1度考えたが、YMCAユースに行くことにした。ここから徒歩15分ほどのようである。そのまま道をまっすぐと書いてあるのだが、途中で地図は途切れている。まあまっすぐ行けばあるだろうと思っていたのだが、歩けど歩けどぜんぜんない。重いバックパックを背負っているので歩いているスピードはかなりトロイものがあったが、さすがに40分程歩いても見つからないとさすがに諦めた。
来た道をまた戻る。陽も高くなり、容赦なく太陽に照らされる。なんでないのだろうとか腹を立てながらも、頭の中では宿のことを考えるようになっていた。もうこうなったら頭の中は回路がぶち切れていて、金額はどうでもいいから、高いホテルでゆっくりしてやる。と、思うようになっていた。とにかく涼しいところで休んで、何か食べたい。やっとの思いでコムタタワーに戻ってきた。さっき通ったときは8時過ぎで今は9時半だったから、かれこれ1時間半も歩いていたようだ。無駄足とはまさにこの事のように思えた。空いている店もまばらだったので、マクドナルドでマックシェイクと朝食を食べた。すると運良く目の前にツーリストインフォーメーションがあった。10時にはオープンするようである。
冷たかったツーリストインフォメーション
ある程度ガイドブックにはホテルの値段が書いてあるのだが、ほとんどこれは信用ならない。日本の時刻表にも最後のほうのページにホテル欄があっておおよその値段が書いてあるのだが、かなりの開きがある。インフォーメーションでビーチで一泊シングルで「200Rm」ぐらいでないかと聞いてみた。するとフェリンギ・ビーチがいいとおっちゃんが熱心に勧めてきた。朝食つきで160RMらしい。しかし、そのホテルは少しバトゥ・フェリンギのビーチから離れているようで、ビーチに近いほうがいいと言ったにもかかわらず、熱心にまだ勧めてくる。せっかくペナン島に来たのだから、ビーチが目の前が良い。「グッドロケーション!」「ディスカウント・プライス」などと言ってきた譲らない。しょうがないのでホテル名を指定すると、やる気を急になくしたらしく、横のおばちゃんがでてきた。そして「ホリデイ・インはいくら?」と聞くと問い合わせはしてくれたようで、180Rmから泊まれるようだ。それならいいと予約してと言ったら、自分でとりなというようにあっけなく電話番号の紙を手渡された。んー、なんとも冷たい対応だった。


ホテルのチェックインの時間にはまだ時間があるので、コムタタワーにあがることにした。さっきから頻繁に出てくるコムタタワーはジョージタウンでは飛びぬけた65階建てのビルで、街を歩くときの目印にはとても便利。展望ラウンジがあるようで、そこにあがってから、ホテルに行くことにした。受付のおばちゃん?に「コンニチワ」と日本語で声をかけらた。やっぱり日本人と分かるのだろうか?なぜか日本では日本人に見えないとか色々いわれるのだが。エレベーターで58階まで上がっていくと、ジョージタウンの町並みが広がっていた。なるほどかなりの高さでよく景色が見渡せる。まず目に入ったのが、街にある建物の屋根がほとんど茶色いこと。カビのような色にも見えるので、まだまだ古い家が多いのだろうか。またバタワースまでのフェリーが行き交うのがよく見えるが、海はあまり綺麗ではないようで、港の近くには水上家屋も見られる。景色が綺麗な反面、ペナン島の暮らしが少し分かるようで面白かった。

ひとりでリゾートホテル

コムタタワーの下がバスターミナルになっていて、ペナン島内を通るバスはすべてここに発着する。170のバスでバトゥ・フェリンギへ向かった。1本前にもバスが通ったのだが、クーラーがないので辞めた。乗り心地はどうかと言うと、バス自体はそんなにぼろくもないし、シートもしっかりしているのだが、なんせ運転が荒い。道はすべて舗装されていているので、ゆれたりはしないのだが、急発進、急ブレーキ、急停車は当たり前である。前に遅い車が走っていると、クラクションを鳴らしまくりあおる。乗客も分かっているようで、降りるときはボタンを押して、ちゃんと停車してから降りていた。
約40分程でバトゥ・フェリンギのビーチに出てきた。バスから降りると、すぐにホリデイ・インは見つかった。しかし一応安宿街も見に行くことにした。途中タクシーにどこにいくかと、声をかけられた。「ホリデイ・イン」と言うと、少しびっくりしたようで、まあバックパック背負っている僕が泊まるようなホテルではないということなのだろうか。「おー、とても高い!もっと安くていいところあるよ。」という。そんなことは知っているのだが「今日だけリッチ!」と言ったのだが、とにかく安宿街に見に行くことにした。歩いて5分ぐらいだし、「歩いていくよ。」といっても、「んーー30分ぐらいかかる。」という。要はタクシーに乗って欲しいということだろうが、もし乗ったとして、すぐについたらなんと言い訳するのだろうか?そんなことを思うと乗ってみたい気もするが、とにかく歩いていくことにした。やはりものの5分も歩けば、安宿街に出てきた。小さな道を1本挟んでビーチがあるのだが、どうも泳ぐには向いていないようだ。なんせ水が綺麗ではないようである。宿自体はわりとのんびりした感じでいいところが多かったが、あまり綺麗ではない海を見てしまうと、泳ぐのは海ではなくて、ホテルのプールで泳ぎたい、リゾート気分を味わいたいという気持ちが確かなものになった。
ホリデイ・インホテルのフロントで料金をたずねると、料金表を出された。するとなんとむちゃくちゃ高いではないか。いわゆる正式な料金表である。さっきツーリスト・インフォメーションで聞いたら180Rmて言ってたと言うと、安い料金をその料金表に書き始めた。今プロモーションレートがあるとの事。それなら最初から言ってほしいものだが・・・。180Rmというのは山側の部屋で、海側の部屋だと210Rmらしい。少し迷ったが、たった1000円ぐらいの差て1日山を眺めててもと思ったので、海側の部屋にしてもらった。鍵を貰うと110という数字が目に入った。さすがに安いから客室で一番低い2階だった。


部屋に入るとさすがに、すばらしい。まず空気がおいしいというか、クーラーが気持ちよくかかっている。ベッドには綺麗なシーツがかかっていて、テレビもちゃんとついているではないか。バスタブもちゃんとついているし、タオル類のアメニティもたくさんある。感動した。前までの旅行では当たり前の光景だったが、こうも感動するとは。やはりいいホテルは金次第だろうか。日本にいると1部屋210Rm(7,000円)出したところで、こんなホテルには泊まれないだろうし、こんな贅沢もいいだろうと納得させていた。
ひとりリゾートも悪くない。


海パンを履いてプールへ行くことにした。どうやらそんなに混んでいる様子はなく、どちらかというと空いているようだ。日差しがとてもきつい。普通ならサンオイルでも塗っておくのだが、たかが半日のことなので。早速プールに飛び込んだ。多少ひとりなので恥ずかしいが、他に知っている人もいないし、日本人もいないようなので、気持ちよく泳いだ。


ビーチへもすぐにいけるのだが、なんやらあやしい看板があった「危険!くらげ!」と。そんなとこで泳ぐわけには行かない。確かにビーチを眺めていると、泳いでいる人はおらず、マリンスポーツをしている人ばかりだった。ジェットスキーやパラセイルなど。料金も日本やグアムなどより格段に安いようだ。


カラフルなビーチタオルを借りて、ビーチマットでしばしくつろいだ。するとプールバーのスタッフがやってきて、「何か飲む?」と聞かれたので、迷わず口から「タイガービア!」と出てしまった。すると「カールスバーグなら1本頼むと1本フリーだよ。」と言われたので、これまた迷わず変更。結局1本タダかあ。こういうセールス方法は海外ではわりとあるようだ。おいしい冷たいビールを飲みながら、気持ちい海風を浴びて、裸でくつろぐ。これぞ、まさに最高のリゾートだ。
心地よいバトゥフェリンギの夜。
部屋に戻り、昼食も食べていないせいか、お腹が空いたので外に食べに行くことにした。まだ時間が早いせいか、あまり店が開いていない。それでもフェリンギ通り沿いに1件のシーフードレストランがあったので入ることにした。開店したばかりのようで、従業員がまかないを食べていた。メニューが出てきたが、英語と日本語が書いてある。ちょっとそれにはびっくり。値段はそれなりに高いようだが、まだ知れている。お腹が空いていたのでご飯物として「ナシゴレン」とあと「スパイシーソース・クラブ」を頼んだ。そしてビールも。蟹のスパイシーソースは1匹半分あって、ボリューム的にも良かったし、何しろおいしかった。ソースも甘辛くておいしいが、その味に負けないような味が蟹にもあった。蟹自体の味は渡り蟹に近いしっかりとした味だ。レモン水で手を洗いながら、ガツガツ食べた。ナシゴレンもなかなかのおいしさだ。なにしろ蟹のスパイシーソースにビールがよく会う。誰も客のいない店内でひとりで食べるのは最初はずかしいと思ったが、それよりも食べ物にたかってくるハエと戦うのに気が取られる。
空模様があやしかったので急いでホテルに戻った。夕立のようだ。洗濯をしてしばらく部屋で久しぶりのテレビを見ていた。ちょうどマスターズがやっていて、タイガーウッズが優勝した。10時ごろになると、小腹が減ってきたので外に出かけることにした。
フェリンギ通り沿いは夜にはなかった露天商がいっぱい出てきて、売っているものはみやげ物が中心だ。土産に興味はないので、食べやすいレストランを探すが、わりと高いところが多い。軽く食べれるものを探していたのだが。するとシンガポールにあったような、フードコートが現れた。


いくつかの食べ物の店が集まり、どれも安い。観光客も多いが、地元の人もわりときているようだ。いつものお気に入りの、「ワンタンミー」を注文。あと「タイガービア」で、今日はこれで4本目である。ここのワンタンミーもおいしかった。まさに麺、スープ、具が三拍子でうまい。マレーシア人はサッカーが好きなようで、大きなテレビで放送されている。僕もそれを見ながら、ペナン島のビールを味わった。フェリンギ通り沿いにはわりと日本語の表記が目立つ。といってもカタカナが多いのだが。屋台でも「サテー」とか「TEPPANYAKI」など。テッパンヤキは英語でも浸透しているのだろうかとか、関係ないこともまで考えてしまうのだが。しかし、実際僕が見た日本人は女の子3人組だけだった。あの海を見たらもう行きたいと思わないかもしれないが、値段も安くていいし、あまり日本人には会わないし、それなりにいいと思う。


今日は少しお金がかかったが、いいリゾート気分を味わえた。選択的に、ここのホテルに泊まったのだが正解だったようだ。体の疲れもとれたし、ひさびさに気持ちのよいベッドで寝れる。

