vol.1 バックパッカーデビュー。新仁川国際空港で一晩過ごすことに。|2001 マレー半島縦断

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旅のはじまり

2001年4月2日。

1月末で会社を退職し、先月、はじめての海外ひとり旅に出た。行き先はバンコク。本当はバックパッカーというものを体験してみたかった。だが当時の自分には少しハードルが高く、航空券とホテルを別々に手配する、いわば無難な個人旅行に落ち着いた。

それでも、ひとりで異国の街を歩く自由さは、想像以上だった。誰にも決められない時間。行き先も、寄り道も、すべて自分次第。その解放感に、すっかり心を奪われてしまった。

そして帰国後すぐに思った。「次こそは、もっと自由な旅をしよう」

行き先に選んだのは、マレー半島縦断。縦断、という響きがまず格好いい。しかも半島には南北に鉄道が通っている。鉄道を使って、国境を越えながら北へ進んでいける。

本当の理由は、もうひとつある。先月1週間滞在したバンコクが、あまりにも楽しかったのだ。あの街の湿った空気、雑踏のざわめき、夜の屋台の灯り。もう一度、あそこへ戻りたい。そして4月中旬に行われる水掛け祭りにも、できれば参加してみたい。

今回の出発点はシンガポールにした。物価が高い、整いすぎている、東南アジアらしさが薄い。だからこそ面白いのではないかと思った。整然とした都市国家から始まり、やがて雑多で熱気を帯びた東南アジアの世界へ溶け込んでいく。

こうして、シンガポールを起点にマレー半島を北上することにした。目指すはバンコク。再びあの街へ戻る楽しみと、水掛け祭りに出会えるかもしれない期待を胸に、マレー半島南の端から旅を始めることにした。

荷造り

朝起きてから、荷造りをはじめた。先月のバンコク旅もバックパックを使用したので、それほど持っていくものは変わらない。前回と変わった点といえば、安宿に泊まるのでバスタオル、あとビーチサンダルと海パンを入れたことぐらいだろうか。あと日本製の蚊取り線香も忘れずに入れた。暑い国へ行くのは荷物が少ないので改めて楽だなと感じる。

基本的にはバタバタするのが嫌いなので、早めに関西国際空港へ行くことにした。外は晴天に恵まれ、気温も暖かい。こんなにいい天気に見送られ幸せとも考えたが、これから日本はいい時期ですよ、と言わんばかりに皮肉にも思える。まあ雨に降られるよりかはよっぽどまし。

新大阪12:46 → 関西空港13:31 はるか27号

旅の気分を盛り上げるため、新大阪駅からJR特急のはるか号で関西国際空港まで行くことにした。昼過ぎなので空いていると思ったが、意外と混雑していて新大阪から自由席はほぼ満席状態だった。途中、USJのオープンにあわせて西九条駅にも停車したが、乗降客はほとんどない。それにしても、この混雑は春休みの影響だろうか。その後、天王寺、阪和線を経て、定刻どおりに関西国際空港へ到着した。

新大阪12:46 → 関西空港13:31 はるか27号

今回の空の旅は大韓航空を利用した。大韓航空だと大阪からシンガポールとバンコク間でオープンジョーの1ヶ月間のFIXOPEN(予約後、帰国日のみ変更可能)。春休み後半、新年度が始まったばかり、ゴールデンウイーク前ということで46,000円と一番安かった。

大韓航空は日本人に人気がないらしい。友達には怖いとか言われるし、機材がぼろいとか、機内食まずいなどなど。もちろんソウル以外の国への利用は、ソウルで乗り継ぐ時間がかかるのがめんどうだからだと思うが。別に安かったらなんでもいいし、別に急ぐ旅でもないので問題ない。

とりあえず、チェックイン。2,650円と高い関西空港施設使用料を払った。今回の行程では、ソウルまでの1区間分しかチェックインできないようだ。ソウルからシンガポールまでチェックインは、ソウルの空港内でトランジット扱いでチェックインできると思っていたのだが…。

関西空港で食事を済ませる。あとガイドブックも何もなしで、シンガポールへ入るのはやはり不安なので定番の「地球の歩き方」を購入。出国審査場へ向かった。午前中と違い午後はかなり空いていた。

大阪/KIX16:00 → ソウル/ICN18:00 KE726便

機内食は幕の内弁当だったが、白飯が冷たくて固くあまり美味しくなかった。このあたりが大韓航空が日本人に不人気な理由ではないだろうか。その代わり大韓航空のCAさんは美人ぞろいだった。2時間弱で着陸態勢に入る。

巨大な新玄関口『仁川国際空港』

到着する空港はソウルの新しい空港で、4日前の3月29日に開港したばかりの仁川(インチョン)新国際空港。滑走路2本を武器に極東アジアのハブ空港を目指しているらしく、着陸料を安く設定し、関西国際空港に発着する航空機を奪おうというのである。確か着陸料は3分の1近かったはずだ。いわば関西空港のライバル的存在なのだ。しかし帰国後知ったことなのだが、関西国際空港が発着料を少し値下げしたのと、USJの影響もあり、逆に関西国際空港の便数、利用客が増えたらしい。

高度を下げていくと、かなり厚い雲の中を抜けて着陸した。その空港面積だけではおそらく関西国際空港の2倍はあるだろう。滑走路着陸後も移動に10分はかかっていただろう。なぜか巨大なターミナルがあるのに、ターミナル外で駐機。タラップで地上に降りて、バスでターミナルへ向かう。

トランジットの間違い

ピカピカの仁川国際空港

通常、入国審査へ進むのだが、僕はてっきりトランジット扱いで、韓国に入国せずにチェックインできるものだと思っていた。荷物は預けていなかったのでそのまま入国せずに、トランジットエリアでのんびりくつろいでいた。一応、トランジットエリアへ行く際係員にちらっと航空券は見せていた。明日の時間は長いけど、ここのベンチならゆっくり寝られそうとか、トランジットホテルなどの料金を調べるなど、うろうろしていた。3,000円分をウォンに両替した。

ビビンパ 7,500ウォン(約750円)

夕食は韓国料理が食べたかったので、アジアレストランにした。メニューはハングル文字と英語のみ。時間が遅かったせいか限定メニューのみだった。4つあったメニューの中から目に付いた「ベジタブルウイズライス」を注文した。手にとって見ると、これがなんと「ビビンバ」ではないか。ラッキーだった。これがなかなか美味しい。調子に乗って食べていると、卵の下にコチュジャンがたっぷり。最後は周りから見られるのが恥ずかしいくらい、汗だくになって食べていた。

最近気になるのが航空会社のマイレージ。もちろん大韓航空にも「スカイパス」というものがあるので貯めようと思い近くのカウンターで申し込もうとしたら、チケットを見せてと言われたので見せたら、なにやら怪しい雲行きになった。どうやら、この航空券では一旦入国してから搭乗手続きをしないといけないらしい。係員に連行されて、通常とは違うルートで入国審査場へトボトボ歩いていく。

空港野宿

一旦入国すると、明日の搭乗するまでは賑やかな搭乗待合ゾーンへは入ることはできない。すでに3階の出発ロビーは閑散としていた。かろうじて営業しているのは1階の売店ぐらいで、ドリンクとおにぎりを買って食べながらどうしようか考える。

時はすでに21時を回っていた。はてはてどうしようものか。1階の到着ロビーにいたタクシー運転手に聞くと、仁川国際空港は郊外にあるため、ソウル市内まで2時間弱かかるらしい。仮に行ったとしてもこの時間とあっては。郊外にあるため空港の周りにホテルはないらしい。一番近いホテルでの宿泊費は最低でも5,000円以上はするらしい。旧金浦空港なら周りにビジネスホテルなどあったのだが…いきなり新空港だったことが裏目に出てしまった。こうなったら腹をくくって空港内で寝るしかない。こういうとき、24時間空港は便利である。逆に、夜に閉鎖された場合を考えるとぞっとする。

しかしベンチで仮眠を試みるも4月初旬はソウルはまだ寒く、半袖2枚と長袖シャツを重ね着して、バスタオルを巻いて寝るがまだ寒くて眠るのは厳しそう。何より固い木製のベンチも寝心地が悪い。

24時を過ぎると人の流れも途絶え、静かな空港の中でテレビの音だけが響いていた。しばらくすると、清掃員が電動掃除機で床を拭いている音で騒がしくなった。何事も最初が肝心なのだろうがかなり念入りに清掃していた。消灯されるわけもなく、明るい中でその後もなかなか寝付けず、実際にはウトウトしていた1時間ぐらいだろうか。思わぬ旅のスタートとなったが、心の中ではこれぞ旅だ、となぜか胸が高鳴っていた。

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