3月15日、いよいよボカ・ジュニアーズの試合当日です。
キックオフは夕方からなので、午前中はのんびり散歩することに。観戦は事前に申し込んだツアーで参加する予定ですが、宿の人たちは自力で当日券を手に入れようと朝から出かけていきました。この違いが後にどう響くかは……後ほど。ブエノスアイレスはほんとうに晴天続き。明日の昼には街を離れるので、まだ歩いていないエリアを歩いてみることにしました。

街は整然と区画整理されていて、計画的に造られたことがよくわかります。なかでも「7月9日通り」は圧巻。アルゼンチン独立記念日(1816年7月9日)にちなんで名付けられたこの大通りは、幅が約140mと世界最広クラスで、中央にはブエノスアイレスのシンボル、高さ67mのオベリスコがそびえています。

7月9日通りのすぐそばには、コロン劇場があります。1908年開場のオペラハウスで、世界三大劇場のひとつに数えられることもある格式ある建物。アルゼンチンにこれほどの劇場があるとは、正直驚きました。ところが大規模改修の真っ最中で、残念ながら内部を見学することはできませんでした。

ブエノスアイレスの魔法でしょうか。なんでもお洒落に見えてしまう。

日曜日のブエノスアイレスは商店のほとんどが閉まり、街がひっそりと静まり返ります。そのせいか、平日より警官の姿が目立ちました。

週末でも営業している観光名所、カフェ・トルトーニへ立ち寄りました。1858年創業のブエノスアイレス最古のカフェで、名だたる文化人も通ったといわれる老舗です。


落ち着いた雰囲気の店内には、歴史を物語る写真や絵画が所狭しと飾られています。ステンドグラスの天井、シャンデリア、重厚な木製の柱と家具が醸し出す空間は、まるで19世紀にタイムスリップしたかのよう。

1900年頃に撮影されたという店前の古写真も展示されていて、当時の賑わいが伝わってきます。

カフェはさすがの美味しさでしたが、チョコムースは甘すぎて少々失敗。カフェ6ペソ(180円)、チョコムース12ペソ(360円)。

昼食はショッピングモール内のフードコート(パティオ・コミーダス)で。軽食中心かと思いきや、本格的な店が並んでいて驚きます。日本食の店もありましたが、ほかの店に比べて値段がかなり高めなせいか、客足はまばら。一番賑わっていたのは、やはり肉料理の店でした。

注文したのはスペアリブのセット。オーダーが入ってからグリルで焼いてくれる本格派で、スジの部分は多いものの肉はジューシーで美味しい。味付けはシンプルに塩のみ。ポテトはちょっと多かったかな。ドリンク込みで22.25ペソ(667円)。
宿に戻ると、自力でチケットを入手しに行っていた人たちも戻ってきていて、無事チケットをゲットできたとのこと。

集合時間の15:30になり旅行会社へ向かいましたが、迎えの車がなかなか来ません。同じツアーにもう1人、日本人参加者がいました。結局、予定より1時間遅れでようやく出発。この時点ですでに試合開始1時間前です。
しかも道路は大渋滞で、車はほとんど動きません。一方、車内ではビールで出来上がったブラジル人やオーストラリア人がテンション全開で盛り上がっていて、試合前の熱気だけは十分すぎるほど。

渋滞を見切ったのか、カミニート付近で車を降りてスタジアムまで歩くことに。すでに試合開始20分前だというのに、まだタンゴの写真を撮ったりして余裕がありました。

そしてここからが本番でした。歩いていると、突然ガイドのひとりが警察に捕まりました。ダフ屋からチケットを買っているところを見つかったようです。一気に先行き不透明な状況に。
幸いガイドが複数いたため全員が連行されることはなく、手元にチケットは何枚か残っている様子。ただ、参加者30人全員分には足りないらしい。なんの説明もないまま、全員がその場に立ち尽くすことに。なんとも酷いツアー会社です。
しまいにはガイドとダフ屋がもめはじめ、あたりに険悪な雰囲気が漂います。さっきまで大騒ぎしていた参加者も静まりかえっています。そうこうしているうちに試合開始時間が過ぎました。ブエノスアイレス滞在を延ばしてまで楽しみにしていた試合なのに。
スタジアムのなかから歓声や応援歌ぎ聞こえてきます。手堅くいったはずが、まさかこんな事態になるなんて。スタジアムの中から歓声と応援歌が聞こえてきます。手堅くツアーを選んだはずが、まさかこんな事態になるとは。
試合開始から30分ほど経った頃、ようやくチケットの目処がついたようで全員に配られました。スペイン語がわからないため帰りの集合場所などの説明があったのかどうかも定かではありませんが、とにかく中に入れるだけでよしとしましょう。

なんとか入場できたのは試合開始から34分後。しかも指定されていた1階席とはまったく逆の3階席。それでも入れただけましと思うしかありません。
チケットもダフ屋から調達したものらしく、座席はバラバラ。ツアー参加者は周囲に数人いる程度で、30人がまとまっている雰囲気はまるでなし。
自分は前日にスタジアム見学に来ていたこともあって構造はなんとなく把握済み。方向感覚には自信があるので、まあなんとかなるかと気楽に構えていました。ところがもう1人の日本人参加者は顔が完全に引きつっていて、かなり動揺している様子。まあ、普通そうなりますよね。

ホーム側のゴール裏はすさまじい盛り上がりで、スタンド全体が揺れているような熱気。運よく試合はまだ0対0。出遅れた割には、なんとか試合に間に合った形です。
ちなみに宿の自力手配チームは、ちょうどそのゴール裏あたりにいたそうで……羨ましい限りです。

おお、リケルメだ。ドリブルのうまさが3階席からでも一目瞭然で、ボールを持つたびにスタジアム全体のボルテージが上がります。ほかの選手は正直誰も知りませんが。
さて、入場してまもなく最初のコーナーキック。




ゴ〜〜〜〜〜〜ル! いやあ、ラッキーでした。試合の立ち上がりを見られなかったのは残念でしたが、スタジアムに入ってすぐにゴールの瞬間に立ち会えるとは。神は見放さなかった。

前半のロスタイムにも2点目が入りましたが、ハーフタイム前でトイレに向かう人が続出し、邪魔になって写真が撮れなかったのが残念。

後半は通路の階段に場所を確保して、ゆったり観戦。2対0とリードしていることもあって、スタジアムは上機嫌な雰囲気に包まれています。

この日の試合は、アルゼンチンリーグ(トルネオ・クラウスーラ)のボカ・ジュニアーズ対アルゼンチノス・ジュニアーズ。アルゼンチノス・ジュニアーズも同じブエノスアイレスを本拠とするクラブで、マラドーナが若き日にプレーしたことでも知られています。ボカとの対戦には因縁めいた背景があるようで、スタジアム周辺にはアルゼンチノスの熱狂的なサポーターの姿もありました。
ボカの応援席は試合中ずっと歌いっぱなし。応援歌なのか掛け声なのか、スペイン語がわからないので内容はまったく不明ですが、声が途切れることがありません。そんな中、「リケルメ、リケルメ」と名前を連呼する彼専用の応援歌が何度も沸き起こっていたのが印象的でした。ボカの選手がいいプレーを見せると、歌の合間にちゃんと拍手も起きる。サポーターとチームの一体感が、スタンドからも伝わってきます。

スタジアムの構造のおかげか、3階席でも選手の動きが意外とはっきり見えます。実はサッカー観戦自体が人生初。もともと好きなスポーツではあるので、生で見るとやはり面白い。

とにかくみんなドリブルがうまい。個人技のレベルは日本代表に劣らない、いやそれ以上かもしれないと感じるほどでした。

判定はやはりホーム有利な気がして、アウェーのアルゼンチノスがちょっとかわいそうにも見えました。

ただ、アルゼンチノスの左サイド29番はかなりうまかった。3人に囲まれながらもそのまま抜ききる場面があって、思わず見入ってしまいました。

後半80分、ボカがダメ押しの3点目。観客もすっかり余裕モードで、のんびりと試合を楽しんでいます。

結果は3対0でボカの快勝。試合開始に間に合わなかったり、席が3階だったりと、いろいろありましたが、内容的には十分満足できる観戦でした。来てよかった。

何より、3ゴールすべてを目撃できたのは幸運でした。仮に試合開始から1階席で見ていても、0対0で終わっていたら話は別。3点入って観客も盛り上がって、ラ・ボンボネーラの雰囲気をしっかり味わえたのだから、結果オーライです。

試合後、両チームの選手たちは特に険悪な様子もなく引き揚げていきました。優勝争いがかかった一戦というわけでもないので、ピリピリした雰囲気はなし。
帰りはツアーの送迎もなく、各自で帰るしかありません。もう1人の日本人が不安そうだったので、旅行会社まで一緒に戻ることにしました。
スタジアム周辺は観戦帰りの人でごった返していましたが、タクシーを拾いやすくするために大通りまで20分ほど歩きました。ラ・ボカは治安が良いとはいえないエリアで、人通りが少なくなるにつれて少々不穏な雰囲気も感じましたが、なんとか大通りへ。
タクシーを何台か捕まえましたが、どれもメーターを使わず値段交渉を求めてきます。何台か見送った末に、メーター使用を約束するタクシーに乗り込みました。ところがトラブルはまだ続きます。目的地に着いてメーターに表示された36ペソを払うと、運転手が「メーターは1人分だから足りない」と言い出しました。最初に一言も言っていなかったのに、今さら何を。運転手と言い合いになっていると、もう1人の日本人が穏便に済ませようとして追加分を払おうとするので、慌てて止めました。そうなれば自分も追加分を支払うことになります。言い合いを続けても埒が明かないので、メーター分だけ払って降車。降りた後に追いかけてくることもなく、向こうも取れたら取ろうという程度のものだったのでしょう。
タクシーの車中では、翌朝9時に旅行会社がオープンするタイミングで2人で乗り込み、ツアーの不手際について返金交渉しようという話になっていました。もう1人の日本人は「もういい」と言っていましたが、2人のほうが説得力があると思って半ば強引に誘いました。ツアー代金は380ペソ払っているわけですし。
宿に戻ってからはやけ酒です。この程度のトラブルで済んだのは幸いだったし、試合内容は良かったし、と自分に言い聞かせながら飲んでいると、自力でチケットを入手したチームも戻ってきて合流。ボカが勝ったこともあって、場は大いに盛り上がりました。明日のことはまったく考えずに深夜まで飲んでしまい、いつ寝たのかもよく覚えていません。目覚ましをかけ忘れたまま寝てしまったのです。翌朝は旅行会社に行かなければならないし、ブエノスアイレス11時30分発の飛行機も予約していたのに……
