深夜3時に出発するはずのD君、3時を過ぎてもまだ寝ていました。なぜか自分が目を覚ましてしまい、起こすというまさかの展開。4月から社会人になるそうですが、大丈夫かと心配になりました。

自分は5時起き。ほとんど眠れていません。そのまま身支度を済ませ、タクシーでクルス・デル・スール(CRUZ DEL SUR)のバスターミナルへ。15ソル(450円)。
ペルーでは荷物の盗難が多いらしく、値段の高いバスで移動することにしました。リマからナスカまで66ソル(1,980円)。値段が高いほど安心、ということらしいです。

クルス・デル・スールのバスターミナルはとても清潔感があり、ちょっとした空港のような雰囲気。預ける荷物にはきちんとタグをつけて管理してくれます。駅というより空港に近い感覚です。
クスコへ向けて出発

これからクスコまで移動します。 運よく一番前の席をゲットできました。

出発してすぐにコーヒーと軽食のサービス。ちゃんとキャビンアテンダントっぽい人はいましたが、ガイド的な案内はしません。

しばらくすると車内でビンゴ大会が始まりました。後ろのおばちゃんがめちゃくちゃ盛り上がっています。最初はいい感じだったのですが、結局何も当たりませんでした。
パンアメリカンハイウェイ

バスが走るのはパンアメリカンハイウェイ(Pan-American Highway)。北はアラスカのフェアバンクスから南はアルゼンチン最南端のウシュアイアまで、南北アメリカ大陸を縦断する幹線道路です。総延長は約3万km、地球の約3/4周に相当するスケールの道路。

ほとんど雨が降らないせいか、砂だけの世界が広がります。ペルーの沿岸部は年間を通じてほとんど雨が降らない乾燥地帯で、海のすぐそばなのに完全な砂漠のような景色が続きます。日本では見慣れない景色が車窓に広がって、とても眠れません。

たまに海岸線近くを走ることも。夏なので泳いでいる人もいましたが、やっぱり海はきれいではなさそうです。

片側2車線の整備された道路が続き、想像以上に快適なドライブです。ただ左右を見渡すと一面の砂。道路だけが近代的で、周囲がすべて砂漠というアンバランスな光景がなんとも異様です。

バスは途中でパラカス(Paracas)という港町に立ち寄りました。ペルー有数の海沿いのリゾート地で、近くにはペンギンやアシカが生息する「リトル・ガラパゴス」とも呼ばれるバジェスタス島があります。

イカ(Ica)という町の中にある砂山。この一帯には巨大な砂丘が広がっており、サンドボードやサンドバギーが人気のアクティビティになっています。鳥取砂丘と比べ物にならない規模で、見た目は完全に「砂の山」です。

途中で一番大きな町、イカにも停車しました。

ナスカに近づくにつれて地形が変わり、空も青くなってきました。砂の色は違うでしょうが、まるで砂の惑星に来たみたい。日本では見たことのない景色を特等席で眺める幸せです。

アンデスから流れる川が長い年月をかけて削り出したのでしょう。なだらかな砂の平地が続いていたかと思えば、急に急カーブが連続して谷へと下っていきます。ずっと平らな砂漠だったのに、突然眼下に谷が現れる感じで、地形の変化がかなりダイナミックです。

パルパ(Palpa)という町。川に削られてできた平野に街が作られていて、正面に見える崖の上がもともとの標高の平地部分です。川がどれだけ大地を削ってきたかが一目でわかります。
この町周辺にも地上絵があり、ナスカの地上絵とあわせて「ナスカとパルパの地上絵」として1994年にユネスコ世界文化遺産に登録されています。

途中2か所を経由して約7時間、ようやくナスカが近づいてきました。
道路沿いにミラドール塔(Torre Mirador)が見えてきます。この展望台に登ると地上絵の一部を見ることができるそうです。ナスカの地上絵といえばセスナで上空から見るのが有名ですが、こうした展望台からも確認できるようです。
ちなみに今走っているこのパンアメリカンハイウェイ、1940〜50年代の建設の際にナスカの地上絵を横断してしまっており、全長190mの「トカゲ」の地上絵が真っ二つに分断されてしまっています。当時はまだ地上絵の重要性が十分に認識されていない時代でしたが、それでもなんとも複雑な気持ちになります。

これがクルス・デル・スールのバス。デザインがめちゃくちゃかっこいい。シートもゆったりしていて、7時間の移動でも疲れ知らずでした。南米はとにかく移動距離が長いので、バスの快適さは本当に重要。その分しっかり作られている印象です。
同じバスで到着した日本人が2人いました。自分があまり何もない町だしナスカの地上絵を見たらその日の夜に移動すると話すと、1人が賛同してくれて夜まで一緒に行動することに。
地上絵フライトを予約しようと旅行会社をいくつかまわりましたが、どこも休み。日曜日だったからでしょうか。結局一番近くの旅行会社で50ドル(4,750円)で契約しました。

お、地上絵。ではなく、これは歩道に描かれたもの。街のいたるところに地上絵のモチーフが描かれていて、町全体で地上絵を推している観光地らしい雰囲気です。
ナスカの地上絵フライトへ
ナスカの地上絵は、ペルー南部の乾燥した大地に描かれた巨大な図形群。上空から見て初めてその全体像がわかります。動物、植物、人のような形などさまざまな種類があり、誰が何のために描いたのかは今でもはっきりとはわかっていません。1994年に「ナスカとフマナ平原の地上絵」として世界遺産に登録されています。
見学はセスナ機に乗って上空から眺めるのが一般的です。

乗客は3人乗り。一緒に行動していた日本人とは別れ、外国人カップルと搭乗しました。9人乗りのプロペラ機には乗ったことがありましたが、セスナは初体験。カップルはスペイン語話者だったので、パイロットが英語とスペイン語の両方で説明してくれます。

出発前にニュースで知っていたのですが、珍しく雨が降ったため周辺の土砂が流れ、地上絵が見えにくくなっているとのこと。実際、最初はなかなか見つけられません。ナスカの地上絵は浅く刻まれた線だけなので、光の当たり方や角度によって見え方がかなり変わります。

くじら(63m)。比較的初期に発見された地上絵のひとつで、海に近い文化との関係を示しているとも言われています。

宇宙飛行士。丘の斜面に描かれた人型の図形で、大きな丸い目が特徴的。平地ではなく斜面に描かれているため地上からでも見ることができる、数少ない地上絵のひとつ。
だんだん見るコツをつかんできました。真横から見せるためパイロットがアクロバットな旋回をするので、乗り物酔いしやすい人は要注意です。

いぬ(51m)。細長い体と尻尾が特徴的で、ナスカの動物モチーフの中でも比較的シンプルな形です。

さる(110m)。渦巻き状の尻尾が特徴的で、ナスカの地上絵の中でも特に有名な一枚。なんとなく形が見えてくるとニヤッとしてしまいます。110mというサイズ感、地上から描いた古代人はいったいどうやって全体像を把握していたのでしょう。

こんな感じで地上絵を目指していきます。自分は助手席でしたが、パイロットが横に旋回しながら地上絵を見せてくれるので、実は後ろの席のほうが見やすかったです。くそ〜〜〜。

コンドル(136m)。翼を大きく広げた姿で描かれており、アンデス文化では神聖な鳥とされています。地上絵の中でも特に有名な一枚です。

くも(46m)。写真を見ると右下の脚だけが長く伸びているのがわかります。非常に精密に描かれており、この突き出た脚には天文学的な意味があるとも言われています。

はちどり(96m)。ハチドリは南米を中心に生息する世界最小クラスの鳥で、毎秒50回以上羽ばたいてホバリングできることで知られています。その羽音がハチに似ていることから「ハチドリ」と名付けられましたそうです。直線的でシャープな形が特徴的で、今回見た中で一番見やすかったかもしれません。

パリワナ(280m)。ケチュア語でフラミンゴを意味し、長い首が特徴的な鳥の図形です。ナスカの地上絵の中でも最大級の大きさを誇ります。

左が木(97m)、右が手(45m)。左右に伸びる道路が先ほど走ってきたパンアメリカンハイウェイで、小さな塔のように見えるのがミラドール塔です。この2つは道路のすぐそばにあり、展望台からも見ることができる珍しい地上絵。ハイウェイがいかに地上絵のすぐ近くを通っているかがよくわかります。

オウム(200m)。くちばしと長い尾羽まで描かれた大型の地上絵です。オウムに見える?

正直なところ、大きな感動があったかというとそこまでではありませんでした。ただ、見ておいて良かったというのが率直な感想です。
長期旅行者の間で評価が分かれるのもなんとなくわかる気がします。「わざわざ行くほどではない」という人と「一度は見る価値がある」という人に二分される感じです。
それと、飛行機の動きがかなり独特で、地上絵を見せるために左右に大きく旋回するため、乗り物酔いしやすい人にはかなり厳しいと思います。乗り物に強い自分でも途中からきつくなってきました。一眼レフのファインダーをずっと覗いていたせいもあるかもしれませんが。
ナスカの町を散策
クスコ行きのバスは20時半の便が満席だったため、23時30分の便を予約しました。20時半はセミカマで運賃が安く、早々に埋まってしまったようです。23時30分の便はカマで144ソル(4,320円)と高め、40ソルほど差がありました。
両方とも満席だったらと思うとぞっとします。今後は早めに予約するようにします。
まだ16時過ぎ。同じバスで来たT君はアレキパ行きで22時まで時間があるとのことで、それまで一緒に街を散策して食事をすることに。申し込んだ旅行会社のおばちゃんが荷物を預かってくれました。

ナスカの町は想像以上に小さく、中心部を少し外れるとこんな感じ。観光地として有名なわりには地方都市のこじんまりとした雰囲気です。

壁に地上絵のモチーフをあしらったおしゃれな外観ですが、2階の窓が割れています。どの家も塀を巡らせ、商店には鉄格子。治安面ではやはり気を抜けない感じがしますね。

公園までこんな塀に囲まれています。やっぱり治安が気になる場所なのかな。

近づいていくと子どもが近寄ってきました。人懐っこい笑顔です。

全体的におとなしい人が多いのかな、という印象。手を1回振っても反応がなく、もう1回振ってみると今度は振り返してくれたり。子どもも大人も同じ感じで、シャイな国民性なのかもしれません。

ここにもコンドルの絵。町のあちこちにこうしたモチーフが描かれていて、ナスカ=地上絵というイメージが町全体にしっかり根付いているのがわかります。

夕方になると屋台がちらほら出てきて、町に一気に生活感が出てきます。昼間の静けさが嘘のようです。

するとこのにいちゃん、カメラを向けたらこのポーズ。手に持っているのはペルー名物のアンティクーチョ(Anticucho)、牛の心臓の串焼きです。1本まるまる食べさせてくれました。
お金を払おうとしたら受け取ってくれませんでした。ごちそうさまです。こういう気さくな出会いが、旅をしていて一番嬉しい瞬間だったりします。

ナスカのおそらくメインストリート。子どもが遊んだりしていて、地方都市らしいのんびりした雰囲気が漂っています。観光地というより普通に人が暮らしている町という印象のほうが強く、名前は世界的に有名なわりに実際に訪れる観光客はそれほど多くないのかもしれません。

地上絵ではないですが、壁に描かれたアート。落書きといえば落書きですが、どこかおしゃれに見えてしまうのは外国マジックでしょうか。

日も暮れてきたので、夕食は「ロス・アンヘレス(Los Angeles)」という食堂へ。観光客向けというより地元の人向けに近い値段設定です。なぜか日本語のメニューが用意されていました。誰かが通い詰めて作ったのかもしれません。ナスカは日本人観光客も多いので、その名残でしょうか。

昼食を食べていなかったのでお腹ペコペコ。ガーリックステーキを注文しました。17ソル(510円)。たっぷりのにんにくソースがかかっていて、量もやっぱり多い。でもご飯がなかったので今回は完食できました。

まだ時間があったのでアルマス広場へ。ペルーのどの町にもアルマスと呼ばれる広場があります。スペイン統治時代の名残で、町の中心として必ず作られているものです。中央に噴水があり、市民がのんびり過ごすにはいい場所になっていました。

T君はアレキパ行き22時のバスで去っていきました。バス乗り場で待ちますが、クスコ行きのバスがなかなか来ません。どうなってるんだ……。

結局2時間遅れでバスがやってきましたが、すでに日付をまたいでいてほんとに眠い。
