昨日の帰りが遅かったこともあり、午前中は宿でのんびり過ごしました。昼過ぎから、ブエノスアイレスの定番観光スポットのひとつ、ラ・ボカ地区のカミニートへ向かいました。

移動は路線バス(コレクティーボ)で30分ほど。土曜日ということもあって道路はスムーズで、人出も少なめ。

乗車時に行き先を告げ、運転席のすぐ後ろにある機械にお金を入れると、乗車券がぱっと出てくる仕組みです。料金は1.25ペソ(38円)。

バス停には路線番号と停車地名が書かれていて、慣れない旅行者でも乗り降りしやすい作りになっています。

カミニートは、ラ・ボカと呼ばれる港湾エリアにある小さな路地。ラ・ボカはかつてブエノスアイレスの主要な港として栄え、ジェノヴァ系をはじめとする多くの移民や船乗りたちが暮らしたエリアだったようです。現在は労働者階級の街としての色合いが残っています。

カミニートの建物は赤・青・黄・ピンクといった原色で大胆に塗り分けられていて、画家ベニート・キンケラ・マルティンのアイデアがきっかけだったといわれています。この一角だけ、まるで別の世界に来たような独特の雰囲気。

チリのバルパライソでも似たようなカラフルな街並みを見てきましたが、カミニートはそれ以上。窓枠の1本1本まで丁寧に塗り分けられていて、色彩への本気度が違います。

もっとも、このカラフルな通りはごく短く、長さは100m余り。人気の観光スポットだけあって、人の往来はひっきりなし。

いつも逆光になるんだよね…
日差しが強すぎる。

ブエノスアイレスの市街地は週末になると静まり返りますが、ここカミニートだけは別世界。観光客でごった返しています。

街中ではあちこちでタンゴが披露されています。タンゴは19世紀後半、ラ・ボカをはじめとする港町のバーや酒場で働く男たちの間から生まれたといわれており、この街はタンゴ発祥の地のひとつとして知られています。カミニートでは路上レストランの前がステージ代わりで、踊り子たちが客寄せを兼ねてパフォーマンスを繰り広げています。

そんな客引きに乗っかって、1軒に入ってみました。注文したのはトマトクリームのパスタで28ペソ(840円)。ビール12ペソ(360円)。観光地価格ではありますが、タンゴ観賞つきと思えばまあ納得といったところ。

一昨日のショーと比べるとダンサーのレベルこそ落ちますが、距離が近くて気軽に楽しめるのはこちらならでは。これはこれでアリです。

タンゴだけでなく、カウボーイ風の民俗舞踊のショーもあって、見どころは意外と豊富。

レストランに入らなくても、路上で行われているパフォーマンスは無料で観られます。そのぶん、客引きの声かけはかなりしつこいですが。

建物のカラフルさだけでなく、壁のいたるところにユーモアあふれる絵が描かれていて、歩いているだけで飽きません。カミニートはそういう遊び心が街全体に宿っている場所です。

さすがサッカー大国。
犬もユニフォームを着ていますねw

カラフルな壁を背景に、洗濯物がひらひら。これがアートなのか本物の洗濯物なのか、正直判断がつきません。でも、どちらでもいい気がしてくるから不思議なものです。
ごく短い通りですが、ブエノスアイレス中心部のヨーロッパ調の整った街並みとはまったく別のおおらかさがあって、気持ちが解放されるような場所でした。


ラ・ボカ地区にはカミニートのほかに、もうひとつ外せない名所があります。アルゼンチンが誇る名門サッカークラブ、ボカ・ジュニアーズです。
1905年創設のボカ・ジュニアーズはラ・ボカ地区を本拠とし、国内屈指の人気と実績を持つクラブ。同じブエノスアイレスを本拠とする宿敵リーベル・プレートとのダービーマッチ「スーペル・クラシコ」は、両チームのサポーターの熱狂ぶりから世界的にも知られています。

カミニートから歩いて5分ほどの場所に、ホームスタジアムの「ラ・ボンボネーラ」があります。

スタジアムだけでなく、周囲の建物のほとんどがチームカラーの青と黄色に染まっていて、ユニフォームや応援グッズを扱う店が立ち並んでいます。

翌日にボカの試合を控えていたこともあり、気分を盛り上げようとスタジアムの見学ツアーに参加しました。スタジアム見学と資料館がセットで20ペソ(600円)。

ツアーの説明はスペイン語のみで、内容はさっぱりわかりません。参加者の出身地を聞く場面があったのですが、南米勢だけでなくヨーロッパからの参加者も多く、ボカ・ジュニアーズの人気が世界規模であることを実感しました。

サッカー専用スタジアムを訪れるのはこれが初めて。ラ・ボンボネーラは横に広がらず3層構造で縦に客席を積み上げた設計で、収容人数は5万人超ながらも不思議とこじんまりした印象を受けます。ピッチと観客席の距離も近く、日本のスタジアムとはまったく異なる雰囲気。試合中の熱気はとんでもないことになりそうです。

スタジアム内もチームカラーの青と黄色で統一されていて、ボカへの愛が隅々まで行き届いています。

ボカ・ジュニアーズは南米屈指の強豪クラブでもあります。クラブ世界一を決めるトヨタカップには2000年と2003年の2度出場しており、いずれも日本の地で戦っています。

続いて記者会見場の見学。

選手控え室とトレーニングルームも案内してもらいましたが、想像していたよりずっと質素な作り。そしてロッカールームの一角に、かつてマラドーナが陣取っていたというコーナーがありました。

博物館には歴代在籍選手の顔写真が並んでいます。日本代表FWの高原直泰も2006年に在籍していたそうで、写真を探してみたのですが見つけられませんでした。

トロフィーケースには国内外の大会で獲得したカップがずらり。

スタジアムや控え室と比べると、博物館はかなり力が入った作りで、展示のかっこよさに思わず見入ってしまいました。

そして2009年現在、リケルメがボカに戻ってきています。バルセロナやビジャレアルを経て2007年に復帰した、ボカが誇る10番。明日の試合が今から楽しみでなりません。

何といってもボカ最大の英雄はマラドーナ。現役を退いた今もグッズの数は圧倒的で、マラドーナへの愛は衰えるところを知りません。

早めに宿へ戻ったので、お世話になっている上野山荘別館を紹介します。

外観は普通のビルで、看板の類は一切なし。防犯上の配慮からか、インターフォンのそばに小さな張り紙があるだけです。チェックイン時に鍵を受け取れば、あとは自由に出入りできます。

場所はブエノスアイレスのセントロ(中心部)で、観光にも買い物にも非常に便利な立地。

部屋はドミトリー中心で、6人部屋が2つとその他。人気の宿で満室の日も多く、事前に連絡を取っておいたほうが無難です。

共用スペースは広々としていて、テレビではNHKワールドも視聴可能。昼夜問わずWi-Fiが使えるのでパソコンに向かっている旅人が多く、情報ノートも充実しています。小さいながらキッチンも備わっていて、隣にスーパーもあるので、自炊している人も多かったです。

この日は、ブエノスアイレスに暮らす日本人の年配女性が宿に遊びにきていて、キッチンで手料理をふるまってくれました。かき揚げ、海苔巻き、漬物と、どれも懐かしい味。話し好きな方で、賑やかなひとときを過ごしました。

宿のみんなが自炊派なので、さすがに「外食行きませんか」とも言い出しにくく、ひとりで近くのカフェ風レストランへ。テラス席でビールを1杯、14ペソ(420円)。ちょっと高め。

野菜不足が続いていたのでサラダを注文しましたが、ビールのお供としてはいまひとつ。サラダで22ペソ(660円)と、やはり外食は割高です。宿で自炊すれば5ペソもかからないことを思うと、なんとも複雑な気分。
夜になると共用スペースに人が集まって、ビールやワインで自然と飲み会がはじまります。カラファテからブエノスアイレスと、日本人宿に続けて泊まってきましたが、世界一周中の旅人が圧倒的に多い。数か月の旅をしている自分はむしろ少数派で、みんな仕事を辞めて世界一周に出ているのです。肌感覚では、世界一周は女性の旅人が多い印象でした。長期旅行だからこそ外食費は節約したい、という事情もよくわかります。
ペルーやボリビアではマチュピチュやウユニ塩湖を目当てに数週間で旅行している人も多かったですが、ここパタゴニアまで南下してくると短期旅行者はほぼ見かけません。
正直、仕事を辞めてまで世界一周に出ている人たちが羨ましくもありましたが、自分は南米に絞った数か月の旅。その分、外食を楽しむ余裕もある。それはそれで悪くないか、と自分に言い聞かせてみたり。日本でも欧米のように数か月単位の長期休暇が当たり前になれば、もっと多くの人が世界に出ていけるのになあ、とつくづく思います。
すぐ隣にスーパーがあるので、飲み物が足りなくなっても買い足しに行けるのが便利ですが、結局この日も床についたのは朝4時頃だったような……。
