始発列車で高松駅へ

丸亀05:15発の始発列車で高松へ向かう。ちょうど太陽が昇り始めたところ。

丸亀駅05:15→高松駅05:53 普通・高松行き
JR四国は赤字路線が多いと言われているけど、こうして早朝からきちんと列車を走らせてくれている。安易に削減に振らない姿勢はありがたい。

6時前の高松駅前、サンポート高松。相変わらず未来都市のような雰囲気。フェリーの始発までまだ1時間弱あるので、まずは朝ごはんへ。
うどん2杯目 手打ちうどん 味庄

朝5時から営業している「手打ちうどん味庄」へ。高松駅の近く、長距離バスターミナルの前にある。瀬戸大橋の開通時から営業しているという老舗。

年配のご夫婦が切り盛りしていて、どこか『孤独のグルメ』に出てきそうな雰囲気。麺を湯がいてもらい、自分で出汁を注ぐセルフスタイル。

コシはほどほどで、どちらかというともちっとした食感。いわゆる有名店のような強いコシとは少し違うけど、温かみのある味で美味しい。「ああ、こういうのでいい」と自然に思える一杯。鰹だしの効いたつゆも良くて、毎日でも食べられそうな感じ。カウンターからは高松駅が見える。
始発フェリーで小豆島・池田港へ

高松港06:50→池田港07:50 国際両備フェリー
港に着くと、すでに乗船待ちの長い列。高松駅から高松港までは約500m、徒歩8分と出ているけど、実際に歩くとやっぱり微妙に距離があるように感じる。

乗船したのは「第十一こくさい丸(しまぞう)」。2021年7月就航で、昨日の「パンダ」より新しく、全体に洗練された印象。早めに並んでいたおかげで窓際の席を確保できたけど、その後どんどん乗客が増えて、気がつけば相席しないと座れないほどに埋まっていた。学生らしき人たちは後部のカーペット席に真っ先に寝転んでいる。
船内にはメリーゴーランドがあって、誰もいなくても時々音楽が鳴る。なんとも不思議な空間。甲板には白いブランコもあって、インスタ映えを意識しているのかもしれない。

車両も多く積まれていて、工事関係者らしき人の姿も目立つ。朝の便ということもあって、車での利用が多い印象。

朝は船の往来も多く、海の上もにぎやか。人の動きが一斉に始まるような、そんな時間帯の雰囲気が伝わってくる。穏やかな瀬戸内海。波はほとんどなく、揺れもほぼ感じない。

間もなく小豆島。これから池田港から、左手に見えている土庄の町まで歩くつもりだけど、思っていたより距離がありそうだ。

池田港から土庄港まで歩こう
小豆島には「土庄町」と「小豆島町」の2つの自治体しかない。人口はそれぞれ約1万2千人と1万3千人でほぼ同じ規模。ひとつの島に拮抗した町が並んでいる構造。
現在の小豆島町は、2006年に池田町と内海町が合併してできたもの。高松との航路もそれを反映するように、フェリーは土庄港と池田港の2つに分かれて発着している。
定刻通り1時間で池田港に到着。ここは小豆島町の港で、これから向かう土庄港は土庄町。同じ島の中で拠点が分かれているのが、そのまま実感できる。
今日の計画は、池田港から土庄港まで歩いて観光し、土庄港からフェリーで新岡山港へ、そのまま路線バスで岡山駅を目指す、というルート。土庄港まで寄り道なしで5.8km。路線バスもあるけど歩く。観光地を回るというより、町を歩くほうが好きなので。

フェリーから大量の車が吐き出されてきて、港周辺は一気に渋滞。土庄方面から来る車と、下船した車が交差点でぶつかるように重なっている。
2021年まで草壁港にも高松からのフェリーがあったことを考えると、その影響もあるのかもしれない。これが日常的に続くとしたら、地元の人はなかなか大変そうだ。

池田港から国道436号を土庄方面へ10分ほど歩くと、島内唯一の高校、小豆島中央高校があった。校舎が新しい。「ああ、そういうことか」と思って調べてみると、土庄高校と小豆島高校が2017年に統合されてできた学校で、場所も両町の中間あたりに設置されているらしい。

まだ9時前で、それほど暑くないのが救い。道沿いにはオリーブ畑が普通に広がっていて、小豆島らしい景色。

ここから土庄町。自転車で通学してくる生徒の姿が多く見られる。

小豆島は砂浜が多い。島を形づくっている花崗岩は風化しやすく、崩れて砂になりやすい性質があるため、それがそのまま堆積しているらしい。
一方で、その花崗岩は質が良く、大阪城の石垣にも多く使われたことで知られている。登山で見かける三角点の標石にも、小豆島の花崗岩が使われていることがあるらしい。
最近ちょっと地理ブームなので、こういう話もつい気になってしまう。

歩いていると「絵になる風景 双子浦」という看板を発見。土庄の市街地へ抜けられるようなので、立ち寄ってみることにした。双子浦展望台は、周囲の松が少し視界を遮っていて、思ったほど開けた眺めではない。ちょっと残念。

鳥居の先は登り坂になっていて、本殿は高台にあるようだ。さきほどの展望台よりは、いい景色が見えそうな予感。
富丘八幡神社

実際に上がってみると、想像以上に眺めがいい。拝殿の向こうに海が広がっていて、鳥居やしめ縄越しに切り取られた景色がちょうど額縁のように見える。

参道の石段はそのまま海へ続いていくような感覚で、両脇のツツジも満開。鮮やかなピンクと瀬戸内の淡い青のコントラストがきれい。

下から見上げてもツツジが綺麗。

岬から中央の島まで砂州が伸びるエンジェルロードが見えた。このあと、あそこまで行ってみる予定。

土庄の町が見えてきました。小豆島で一番栄えているエリアです。


神社から下って土庄の市街地へ出ようとすると、山の斜面に段々状の構造物が見えてくる。何かと思ったら、さっき訪れた富丘八幡神社の「桟敷」だった。
山林の斜面に石垣を築いて、祭りなどを観覧できるようにしたものらしく、現在は364もの桟敷があるという。前知識がなかったので、最初は段々畑かと思っていた。


繋がってないエンジェルロード

エンジェルロードは、干潮時に砂州が現れて島と島がつながり、歩いて渡れるようになる場所。瀬戸内海は干満差が比較的大きく、そのタイミングで道が現れる。手をつないで渡ると幸せになる、という話でも知られている。

ビーチに下りてみると、右手に小豆島国際ホテル。その周辺にも宿泊施設が並んでいて、このあたりが観光の中心になっているのがわかる。

訪れた時間帯は満潮に近く、砂州はつながっていなかった。ただそれは事前にわかっていたこと。エンジェルロード自体が目的というわけでもないし、つながっている時間帯はかなり人が多そうなので、むしろちょうどいい。

弁天島の上には「約束の丘展望台」があって、階段で上ることができる。エンジェルロードを見下ろせる位置にあり、全体の形がよくわかる。恋人の聖地にも登録されていて、幸せの鐘が設置されていた。ひとり旅なので、人の少ない満潮の時間帯に来て正解。

展望台から見ると、中央に中余島、その奥に大余島。干潮時にはさらに奥まで砂州が伸びて島同士がつながる。ただ中余島は私有地のため立ち入りはできないらしい。
世界一狭い海峡・土渕海峡

ギネスブックにも登録されている、世界一狭い海峡。全長は約2.5km、最も狭いところで幅9.93m。
海峡は陸と陸の間にある海のこと。つまり小豆島は、この土渕海峡によって実質的にふたつに分かれている。北側を向くと、右(東側)が小豆島本島、左(西側)が前島。見た目は細い川や水路のようだけど、これでもちゃんとした海峡らしい。
迷路のまち
かつて海賊の侵入を防ぐため、また海からの強風をしのぐために、細く入り組んだ路地が不規則に張り巡らされた町。それがいつの間にか「迷路のまち」と呼ばれるようになったらしい。


確かに複雑な路地が続いている。こんな場所に家を建てるのも、暮らすのもなかなか大変そう。

路地の先に、小豆島八十八ヶ所霊場第五十八番札所・西光寺が見える。迷路のまちの中でもよく紹介される撮影スポット。


迷路のまちの空き家を活用した「妖怪美術館」という施設があった。地域活性化の取り組みのひとつらしい。入館料は2,900円。ちょっと高い気もする。

別館のひとつを見ていると、女性2人がスマホをかざしてロックを解除し、そのまま入館。無人運営らしい。外から建物を眺めていると、1分もしないうちに出てきた。2,900円でその滞在時間か。

妖怪のアートは夜に見たら少し不気味かもしれない。

暑さでだいぶバテてきたので、そろそろ土庄港へ向かう。日差しが強くて、日傘をさしながら歩く。日傘はもう必須アイテム。

この広く開けた水面も、土渕海峡の一部。さきほどの細い区間とはまったく違って、同じ海峡とは思えない広がり。
土庄港

土庄港に着くと、港前に「平和の群像」という像があった。壺井栄の小説『二十四の瞳』は、小豆島出身の作家による作品で、島をモデルにした舞台で、女性教師と12人の生徒の交流を通して戦争の時代を描いている。映画化もされていて、小豆島の風景と強く結びついた作品になっている。
実は添乗員をやっていた頃、何度かこの島の二十四の瞳映画村に案内したことがある。でもそのときは映画の内容をほとんど知らないままコースに組み込んでいた。今思えばちょっと恥ずかしい。

こちらは土庄港に設置されている「太陽の贈り物」という作品。オリーブの葉をモチーフにした円形のオブジェで、小豆島らしい象徴的なデザイン。

港のそばに手延べそうめんの直売所があった。小豆島はそうめんも特産品だ。生産量はそれほど多くないものの、味の良さから三大そうめんのひとつに数えられているらしい。オリーブ、しょうゆ、ごま油、そうめん……特産品が多い島だなとつくづく思う。
フェリーまでの時間が微妙だったので、直営レストランの生そうめんは食べられなかったが、お土産に乾燥そうめんを買って帰った。
県境越えるフェリー

土庄港11:40→岡山港12:50
この航路は1日16便ほど運航されている。高速船はなくフェリーのみで、旅客よりも車や貨物の需要が中心の航路という印象。

乗船したのは「第二しょうどしま丸」。2003年就航で、この航路の中ではいちばん古い船らしい。真昼間という時間帯のせいか客室はガラガラ。
窓にはアニメのステッカーが貼られていて、「からかい上手の高木さん」という作品らしい。作者が小豆島出身で、実写映画もこの島で撮影されたとのこと。舞台もこのあたりなのかもしれない。


フェリーターミナルの周辺から、すでに香ばしい匂いがしていた。すぐ近くに、ごま油で知られる「かどや」の製油工場がある。小豆島のそうめん作りにはごま油が使われるのが特徴で、その需要に目を付けた創業者が小豆島で事業を始めたのが起源らしい。原材料のごまは外国産で、船での入荷や出荷がしやすいよう、海沿いに工場を構えているのだろう。

いい匂いがずっと漂っていて、急にお腹が空いてきた。ごま油の香りって食欲を刺激する。

土庄港は土渕海峡の途中にあるので、しばらくは狭い海峡をゆっくり進む。海峡内は内海らしく穏やか。やがて海峡を抜けて瀬戸内海へ出るが、外に出てもほとんど変わらず穏やかなまま。普通なら少し揺れそうなものだけど、瀬戸内海らしい静けさが続いている。

甲板で海風を浴びながら景色を眺めていると気持ちいい。日焼けはちょっとやばそうだけど、それでも外にいたくなる。瀬戸内海は島が多くて、見ていても飽きない。そんな中、乗客のほとんどは客室で寝ていた。

航路上に浅瀬があるのか、航跡を見ると少し回り込むように進んでいるのがわかる。
犬島

しばらく進むと犬島が見えてくる。1925年に操業を終えた犬島精錬所の煙突が今も残っている。銅の精錬で栄え、最盛期には2,000人近くが働いていたという。現在はその遺構を活かして、2008年から犬島精錬所美術館として公開されている。

犬島の西側には犬ノ島という小さな島があって、そこには化学工場が建っている。先月訪れた大久野島の毒ガス工場や、この犬島の精錬所もそうだけど、危険を伴う施設は被害を抑えるために離島に設けられてきた経緯があるらしい。
一方で、瀬戸内海は本土に近く、船での輸送もしやすい。そうした条件もあって、こうした施設の立地として選ばれてきたのだと思う。
先月の大久野島の毒ガス工場といい、穏やかで風光明媚なイメージの瀬戸内海だけど、少し目を向けると、こうした負の歴史も意外と残っている。

姉妹船の「おりんぴあどりーむ」とすれ違う。JR九州の列車デザインで知られる水戸岡鋭治が手がけた船で、甲板にはメリーゴーランドや滑り台もあるという。「海の上を走る遊園地」がコンセプトらしい。
岡山湾

オレンジの煙突はファンネルといい、船のエンジンの排気を外に出す役割がある。ウルトラマンに登場した怪獣に、こんなのがいた気がする。

岸沿いに大きな工場が見えてきた。テイカの岡山工場で、酸化チタンなどを製造する化学工場らしい。広い敷地に設備が並んでいて、どこか独立したひとつの世界のような雰囲気。少し異世界感がある。

岡山湾に入ると、船がこまめに左右に舵を切りながら進んでいく。浅い湾内で、深いところを選んで走っているようだ。
潮の流れの影響なのか、ブイが大きく傾いている場所もあった。瀬戸内海は穏やかに見えるけど、こうして見ると意外と気を使う海なのかもしれない。



70分で新岡山港に到着。島の遺構や工場の風景、姉妹船とのすれ違いなど、なかなか見どころの多い船旅だった。新岡山港は思っていたよりシンプルな港。

干潮の時間帯だったので、甲板から降りるときは上り坂。これだけ干満差があると浮き桟橋を使いそうなものだけど、ここは固定式だった。
路線バスで岡山駅へ

岡山駅までは路線バスが接続している。このバスもワイドパスに含まれている。

初めてのエリアなので最前列に座って景色を眺める。新岡山港からの乗客は10人弱だったけど、片側3車線の幹線道路に出ると、停留所ごとにどんどん人が乗ってきて、気づけば立ち客も出るほどの混雑に。フェリー利用者向けの路線かと思っていたら、普通に地域の生活路線だった。

岡山は何度か来ているけど、いつも通過か乗り換えばかりで、駅周辺をちゃんと歩いたことがない。今日は少し散策しようかとも思っていたが、歩きすぎと甲板での潮風、日差しでかなり体力を消耗していた。エアコンの効いたバスから降りる気にもなれず、そのまま岡山駅まで乗り通すことにした。
バスは多くが天満屋のバスターミナルに立ち寄っていて、あのあたりが岡山の中心的な繁華街なのだろう。路面電車も走っているが、路線は限られていて地下鉄もない。岡山では路線バスが交通の主役のようだ。


