2009年2月5日
アメリカの入国審査は、トランジットで乗り継ぎの航空券を持っていたためか、質問もなくスムーズでした。
時刻は11時。次のリマ行きの出発まで10時間近く余裕があります。外気温はマイナス9度。南米はこの時期が夏にあたるため、真冬の防寒着は持ってきていません。でも、このまま空港で時間を潰すのももったいない。ニューヨーク市内まで行ってみることにしました。
帰りもトランジットで立ち寄る予定なので、無理して行かなくてもよかったのですが、それもまた勿体ない。
マンハッタンへ

JFKの各ターミナルと地下鉄・鉄道の乗換駅は、エアトレインという交通システムで結ばれています。ターミナル間は無料ですが、乗換駅までは有料。まずはメトロカードを購入しました。

ハワードビーチ駅で地下鉄A線に乗り換えます。かつては治安が悪く敬遠されていた地下鉄ですが、今はすっかり改善されています。
JFKからマンハッタンまでは約25km。エアトレインと地下鉄を乗り継いで約1時間で、鉄道だけでアクセスできるのは旅行者にとってありがたいところです。エアトレインが5ドル(475円)、地下鉄2ドル(190円)

体格のいい人ばかりで、思わず身構えてしまいます。みんなヘッドフォンで音楽を聴いていて、ほんと音楽が好きなんですね。日本とは雰囲気がかなり違い、車内の空気もどこか独特。最初はかなり緊張しました。

フルトン・ストリート駅(Fulton Street)で下車。地上に出た瞬間、半端なく寒い。高層ビルが密集するマンハッタン南部は昼間でも直射日光が入りにくく、体感温度はさらに低く感じます。それでも見上げると高層ビルに圧倒される、さすが世界一の大都会です。
グラウンドゼロ
ニューヨークを訪れたからには、ここだけは絶対に行かなければと思っていた場所があります。「グラウンド・ゼロ(Ground Zero)」、2001年9月11日のアメリカ同時多発テロによって崩壊したワールド・トレード・センターの跡地です。

しかし現地は、新しいフリーダム・タワー(Freedom Tower)建設のために四方を高いフェンスで囲まれ、無数の大型クレーンと剥き出しの鉄骨がひしめき合う巨大な工事区域になっていました。中の様子はとても見られそうにありません。工事スタッフに尋ねると、反対側のビルから見ることができると教えてくれました。

ワールド・フィナンシャル・センター(World Financial Center)の2階からグラウンド・ゼロを眺めることができました。工事中の今は追悼できる場所もないため、ここを訪れる人が多くいます。ニューヨークを訪れた人は、やはり見ずにはいられないのでしょう。
若いグループが会話もせず、ただこの地を眺めているのが印象的でした。にぎやかな都市の中にありながら、そこだけ時間の流れが少し違っているような感覚。

あの日、私は26歳でした。会社を辞めて海外旅行にはまりはじめ、世界を少しずつ肌で感じ始めたころ。家のテレビに映し出される悲劇を見て恐ろしくなり、思わず友人の家に転がり込んで、画面に釘付けになっていたことを覚えています。
そんな場所に今、自分が立っています。建設中のフリーダム・タワーは、倒壊したワールド・トレード・センターをも超える高さ1,776フィート(541m)。1,776という数字はアメリカ独立の年を意味しています。悲しみを乗り越え、新たな象徴を打ち立てようとするその姿に、いかにもアメリカらしい強さと意志を感じさせられました。

グラウンド・ゼロの近くにあるステージ・ドア・デリカテッセン(Stage Door Delicatessen)というピザ屋で昼食をとることにしました。
店内はいわゆるニューヨークのデリといった雰囲気。カウンター越しに注文するスタイルで、地元の人やビジネスマンが次々と立ち寄っては、さっと食べて出ていく回転の早いお店です。

ランチスペシャルは6.5ドル(618円)。ピザ2枚とドリンク1杯のセットですが、このピザがアメリカンサイズでめちゃでかい。2度焼きで温めてくれますが、シンプルながらしっかりおいしかったです。
ロウアーマンハッタン

ズコッティ公園(Zuccotti Park)周辺のロウアーマンハッタン。歴史を感じさせる重厚な建物と、50階を超えるモダンな高層ビルが隣り合う新旧混在の風景が、いかにもニューヨークらしい。

右の茶色い建物は、1846年に完成したゴシック復興様式のトリニティ教会(Trinity Church)。高層ビルに囲まれながらも、ひときわ存在感があります。空はどこまでも快晴。放射冷却でマイナス9度まで冷え込んでいるのも納得です。
ウォール街
グラウンド・ゼロからすぐ近く、徒歩数分のウォール街(Wall Street)へ。ニューヨークの金融の中心地で、世界経済にも大きな影響を与える場所。名前の由来は、17世紀にオランダ人入植者がこの地に築いた防壁(ウォール)からきているそうです。
9.11以降、このエリアは車両の進入が厳しく制限され、歩行者専用のような形になっていました。

ここがニューヨーク証券取引所(New York Stock Exchange)。世界に不景気をもたらした発信源ともいえる場所です。リーマンショックからまだ5か月、どこか重苦しい空気が漂っている気がします。テレビやニュースで何度も見てきた場所ですが、実際にその場に立つと、空気が違うというか、現実の重みのようなものを感じました。

案内板にさりげなくイラストが描かれているのも、いかにもニューヨークらしくておしゃれです。

バス停の広告が面白い。オバマ大統領の「Yes We Can」をもじった、ペプシの「Yes You Can」。CANには缶という意味もあるので、二重の意味を持たせた遊び心のある表現です。こういうセンス、いかにもアメリカらしい。

自由の女神を見ようとバッテリーパーク(Battery Park)までやってきましたが、雪がたっぷり残っています。散策中には警官に呼び止められ、警察犬がバックパックをチェックされる場面も。テロ対策なのか、こうした厳重な警備が日常の一部になっているのも、この街の特徴なのかもしれません。
そして街中にトイレがほとんどない。寒さでトイレが近くなっているのに、これはつらい。
これ以上いると風邪をひくと判断し、早めに空港へ戻ることに。空港にバックパックを預ける場所がなく、市内をずっと重い荷物を背負ったまま歩き回っていたので、体力的にもかなりきつかったです。

サウスフェリー駅(South Ferry)から地下鉄に乗車。ニューヨークの地下鉄の車両、ほんとに古い。レトロというよりも、古めかしいという表現がぴったり。

地下鉄を乗り継ぎ、ジャマイカ駅(Jamaica)でエアトレインに乗り換えてJFKへ向かいます。夕方に向けてさらに気温が下がってきたようで、早めに戻ってきて正解でした。

ニューヨークからペルーのリマ行きはアメリカン航空のサイトで予約しましたが、実際の運航はラン航空(LAN Airlines)のため、事前に座席指定ができません。早めに空港へ到着してすぐチェックインしたものの、窓側はすでにいっぱい。まあ深夜便なので、景色は見えないんですが。
ラン航空はJALが到着した第2ターミナルとは別の第4ターミナル。ターミナル内は暖かく、ベンチでウトウトしているうちにそのまま寝てしまいました。
ニューヨークからリマへ

LA531便、ニューヨークJFK22:30発→リマ翌06:30着(所要時間8時間)。
ラン航空(LAN Airlines)は南米を代表する航空会社で、JALと同じワンワールドアライアンスに加盟しています。ニューヨーク→リマ、帰りのリオデジャネイロ→ニューヨークはアメリカン航空サイトから予約。航空券82,100円、サーチャージ等諸税13,680円、合計95,780円でした。

ここまで来ると機内に日本人の姿はなく、スペイン語が飛び交っています。キャビンアテンダントにも「セニョーラ」と声をかけられました。
スペイン語はさっぱりわかりませんが、コーヒーのことを「カフェ」、水のことを「アグア」というなど、意外と聞き覚えのある言葉もあります。なんとかなるかもしれません。ちなみに南米はブラジルがポルトガル語で、それ以外の国はスペイン語圏。指差し会話帳を持参しているので、いざとなればこれを頼ります。

もうすぐ深夜12時だというのに夕食が提供されました。周囲の乗客の大半は寝ているところを起こされた様子でしたが、夕食をとっていなかったのでありがたい。パスタかビーフを選べたので、ビーフをチョイス。なんの料理かよくわからないけれど、濃厚な味付けでなかなかおいしかったです。

南米へ向かう不安と期待
これから始まる南米の旅。治安が悪いという噂の絶えない場所へ、いよいよ向かっています。「無事に旅を終えられるのだろうか」という不安と、「一体どんな景色が待っているのか」という期待。その両方が交互に押し寄せ、目を閉じてもどうしても眠れません。
眠ることを諦め、映画で気を紛らわすことにしました。選んだのは『ダイ・ハード4.0』と『トランスフォーマー』。爆音と派手なアクション、現実離れしたハリウッドの世界に没頭している間だけは、緊張感を忘れられました。
機内の明かりが落ち、多くの乗客が眠る中、映画の光に照らされながら、おそらく人生で一番緊張した時間を過ごしていたと思います。
