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vol.34 パイネ国立公園日帰りツアー【2009 南米2か月】

2009年3月10日

今日はチリのトーレス・デル・パイネ国立公園への日帰りツアーに参加します。

もともとパイネは諦めていたのですが、カラファテから日帰りツアーが出ていると知り、急遽申し込みました。ツアー代金は300アルゼンチンペソ(9,000円)。

朝食はインスタントのマカロニ。4時半に起きて作りました。

5時半にミニバスが宿まで迎えに来て、大型バスに乗り換えて6時出発。距離があるぶん、早朝スタートです。バスはゆったりした2階建ての大型バスで、参加者は10名ほどなのに大盤振る舞いの贅沢仕様。

カラファテからパイネ国立公園まで、直線距離なら100kmほどですが、途中に山脈や渓谷が立ちはだかって直接の道路がありません。そのため大きく東に迂回する必要があり、走行距離は300kmになります。

7時頃、地平線が広がります。パタゴニアの東側は山がないので、視界を遮るものが何もありません。きれいな朝焼け。

7時23分、太陽が昇ってきました。いい1日になりそうです。車内はみんな爆睡モード。欧米人は早起きが苦手なんでしょうか。

アンデス山脈が徐々に姿を現してきました。ペルーを旅し始めてからずっと「アンデス山脈」という言葉が出てきているのですが、これだけ移動しても同じ名前の山脈が続いていることに、あらためて不思議な感覚を覚えます。アンデス山脈はベネズエラからアルゼンチンまで7カ国にまたがり、全長7,000kmを超える世界最長の山脈。これほどの距離を旅しても、まだ同じ山脈の中にいるはずですね。

カラファテを出発して3時間半ほど走ったところで、アルゼンチン側のイミグレーション(Paso Río Don Guillermo)に到着。出国手続きを済ませます。

バスに乗り込んで5分ほど走ると、チリ側の国境検問所「Control Fronterizo Cerro Castillo(セロ・カスティージョ)」。ここで入国手続きを行います。

乗り物もここで切り替わり、小型バスに乗り換え。新たにチリ側のガイドが合流しました。

サルミエント湖(Lago Sarmiento)

未舗装の道を走り、まずはパイネの山々が見える展望スポットで撮影タイム。サルミエント湖越しに、いくつもの山が折り重なるように連なる山塊の姿が広がります。

トーレス・デル・パイネ国立公園は1959年に設立され、面積は2,400km²。氷河・湖・森林・山岳と多様な自然が凝縮されており、1978年にはユネスコの生物圏保護区にも指定されています。最高峰はパイネ・グランデ(3,050m)。「パイネ」はこの地に暮らした先住民テウェルチェ族の言葉で「青」を意味するといわれます。

しばらくすると、車内に簡単な昼食セットが配られました。バーガー、スナック菓子2袋、ミネラルウォーター。これはありがたい。

草原の中に大きな鳥が2羽。「ニャンドゥ」です。体高90〜100cmほどで、一見するとダチョウの小型版といった印象。実際にダチョウと同じ飛べない鳥の仲間で、パタゴニアやアンデス高原の草原地帯に生息しています。

アルマガ湖(Lago Amarga)

「アルマガ湖」です。「アルマガ(Amarga)」はスペイン語で「苦い」という意味。排水口を持たない閉鎖水系のため、水分が蒸発するたびに塩分が濃縮され、湖岸には白い塩の縁が残ります。この苦くてしょっぱい味が名前の由来だといいます。湖水が独特の緑色に見えるのは、藻類などプランクトンの影響です。

そして背後に広がるのが、この国立公園の象徴・トーレス・デル・パイネ。氷河の侵食によって削り出された、垂直にそそり立つ3本の花崗岩の岩峰で、最高峰は2,850m。

よく見ると湖のほとりにフラミンゴがいました。懐かしい眺めです。ウユニ塩湖ツアーで高地の湖に見て以来。あれからもう20日が経ったのか。その時の日記にも書いたと思いますが、フラミンゴはアルカリ性の塩湖を好む鳥で、えさとなる藻類やエビが塩湖に多いため集まるのだそう。

道を走っていると、突然グアナコの大群が現れました。フエゴ島でも何度か見かけましたが、これは大発生と呼ぶしかない規模。

グアナコは、ペルーで見たリャマやアルパカと同じラクダ科の動物です。フィッツロイのエリアと比べると、野生動物の数がはるかに多い印象です。

ノルデンショルド湖展望ポイント

まるで写真撮影ツアーのようです。次の展望ポイントはノルデンショルド湖。写真を撮るために乗っては降り、を繰り返しながら公園内を移動していきます。

見る角度によってパイネの山々の表情はがらりと変わりますが、ここからの眺めが一番おだやかに感じました。眼下にターコイズブルーのノルデンショルド湖が広がり、背後に山々が連なります(手前の小さな湖と混同しがちですが、奥の大きなターコイズブルーの湖がノルデンショルド湖です)。

左にどっしりそびえるのが、公園最高峰のパイネ・グランデ(2,884m)。中央に立ちはだかるのがクエルノス・デル・パイネ(「パイネの角」)で、上部が暗い花崗岩、下部が明るい堆積岩という2色の岩肌が独特です。そして右に控えるのがセロ・アルミランテ・ニエト(2,670m)。それぞれ性格の異なる山々が並ぶ、パイネを代表する眺めのひとつです。

クエルノス展望台へミニトレッキング

バスを降りて、しばらく歩くようです。ほんとうに気持ちのいい天気です。正面にはパイネ・グランデが見えています。ちなみに一人参加は自分だけでした。

足元には鮮やかな黄色の低木。これはレンガという落葉樹で、パタゴニアを代表するブナ科の木です。秋になると葉が黄色や赤銅色に染まり、パイネの紅葉の主役として知られています。あまりにも天気が良くてみんな半袖なので、もう秋だということをすっかり忘れてしまいそうです。

なんかやばい山が見えてきた…。

ロス・クエルノスはスペイン語で「角」を意味し、その名の通り、独特の形をした山塊です。3つの峰からなり、最高峰はクエルノ・プリンシパル(主峰)で標高2,600m。黒い頂部と明るい花崗岩の中腹という2色の岩肌が間近で見るとかなりインパクトがあり、ここまで来るまでこれほど印象的な形とは思っていませんでした。

そして、クエルノスとパイネ・グランデの間の奥に、ひときわ鋭く天を突く岩峰が見えます。これは「アレタ・デ・ティブロン」、スペイン語で「サメのヒレ」という名の花崗岩の岩峰です。氷河の侵食によって削り出されたもので、その名の通りサメのヒレのようにスパッと切り立っています。

駐車場から20分ほど歩いて、ノルデンショルド湖の湖畔まで降りることができました。あまりにも素晴らしい景色の連続で、日帰りで来てしまったことを後悔するくらい。パイネ国立公園にはトレッキングルートが整備されていて、山小屋やキャンプ場もいくつかあるので、泊まりで来ればよかったと思います。

山が西側にあるため、午後は逆光になってしまいます。写真を撮るなら午前中に来たいですね。

ノルデンショルド湖の水も、氷河から流れ込む水を含んでいるためか、独特の青白い色をしています。

「ネネオ」というパタゴニア固有のクッション状の低木で、細い枝が無数に密集してドーム型に育ち、先端が鋭いトゲになっています。強風・乾燥・寒さが厳しいパタゴニアの環境に適応した植物で、こういった過酷な場所ではトゲトゲした硬い低木やコケのような這う植物が多く見られました。

公園内最大の滝、Salto Grande

次に向かったのはサルト・グランデ。スペイン語で「大きな滝」という意味で、ノルデンショルド湖からペオエ湖へと流れ落ちる、高さ約65mのパイネ国立公園最大の滝です。

水源はパイネ川。氷河からの融水が流れ込んでいるため、水量がとにかく豊富で迫力があります。毎日これだけの量の雪や氷が溶けているのかと思うと、スケールの大きさを改めて感じます。

背後にはパイネ・グランデ(3,050m)がどっしりとそびえ、一枚の絵のような風景。

パイネ山群の独立した成り立ち

最後に、エル・トロ湖北西端にある国立公園の管理事務所に立ち寄ります。サルト・グランデから40分ほど移動してきたわりには、景色的には少し地味な印象。おまけに朝が早かっただけに、だいぶ疲れてきました。

事務所内は資料館を兼ねていて、パイネ山塊の成り立ちを解説したパネルが展示されています。

地殻変動とマグマの影響で、このような奇怪な山になったようです。パイネ山群の裏側は太平洋側のようで、地図で確認すると50kmも西へ行けば出られるようです。もちろん険しい地形なのでそんな道はないですが。

パイネ山塊は、パタゴニア・アンデスとは独立した、独自の地質学的な歴史と構成を持つ山系だといいます。その成り立ちはこうです。約1,200万年前、マガジャネス盆地の堆積岩の地層の間に、ドロドロに溶けたマグマ(花崗岩)が入り込み、キノコ状の岩体「ラコリス(餅盤)」を形成しました。マグマは上の地層を内側から押し上げ、やがて表面を覆っていた柔らかい堆積岩が長い年月をかけて削り取られ、硬い花崗岩が剥き出しになりました。そして最後の氷河期に、現在の険しくギザギザした特徴的な山容が刻み込まれたのです。

ちなみに地図で確認すると、パイネ山塊の裏側はもう太平洋側で、西へ50kmほど進めば海に出られるようです。もちろん険しい地形ゆえ道路などありませんが、この山々がいかに大陸の端に立っているかがわかります。

事務所はトーロ湖に面していますが、湖自体はとても大きく、ここから見えるのはほんの一部です。見学はこれですべて終了。ほんとうにいい1日になりました。

ここまでの移動距離は300km。直線距離でいえば大阪から金沢ほどの距離に匹敵します。帰りも同じルートを戻ると思うと、少し気が重くなりますね。15時50分に出発。

左側の座席に座っていたので、帰りはパイネ山群を眺めながらの道中になりましたが、あいにく西日の逆光でよく見えません。

それでもクエルノス・デル・パイネのインパクトはやはり別格です。トレッキングルートを歩けば間近で見られるそうで、次来るときは泊まりでじっくり歩いてみたいと思います。

公園の奥地まで行っていたぶん、国境を越えるころにはすでに1時間が経過。ここからさらに4時間の道のりです。

車内では、アメリカ在住の韓国人夫婦2組と話が盛り上がりました。いろいろ話しているうちに「床の間」の話題になり、「なぜ日本の家には床の間があるのか?」と聞かれたのですが、これが答えられない。自分の家には床の間はないし、ちゃんと勉強したこともないので、返答に困ってしまいました。ちなみに「床の間」は英語でも「TOKONOMA」で通じるようです。

日本のことを外国人に聞かれて答えられない場面は、これに限らずよくあります。自分の国のことなのに意外と知らないものだなと、改めて感じた帰り道でした。

帰り道、窓の外にはちょうど満月。パタゴニアの草原に、丸い月が浮かんでいます。

夜22時、ようやくカラファテの街に到着。長い1日でした。朝5時半に出発して、バスで合計8時間以上揺られた計算になります。さすがに疲れましたが、でも行って良かった。パイネ国立公園はいつかトレッキングで再訪したい場所です。