5日目 ポッパ山|ミャンマー2006

タウン・カラッ
2006ミャンマー

コウゾウ式

思ったより早く目が覚めた。
昨晩は遅くまで飲んだといっても、12時前には寝ていたので、
結構な時間は寝ていたのだろう。
するとばったり早速のりさんと遭遇。

いっしょにゲストハウスの食堂で朝食をとっていると
「コウゾウ式をが前を通るよ」と教えてくれたので、
朝食中にもかかわらず飛び出していった。

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確かに「コウゾウ式」と言っていたが、
その時は一体何の意味なのかはわからなかったのだが、
通りに出て行ってみてるとなんとなくは分かった。

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おそらく小さい子供が、僧侶になることの儀式で、
それを街中にお披露目することなのだろう。

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その行列のほとんどはピンク色やそれに近い服を着飾った女性たちで、
中心には馬に乗った小さい女の子がいた。
まだこんな小さいのに僧侶になるため修行するのだろうかというほどの年齢。
5歳ぐらいだろうか・・・いや3歳ぐらいにしか見えない。
主役の本人はいったい何がおきているのかよくわかっていないほど、
キョトンとして、置物のように笑顔すらなかった。

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町の住民の誰もが見物にきているかのように、
沿道には見物人がわんさかと集まっていた。
小さいな子供たちもたくさん見に来ているのだが、
やはり子供たちもその主役の女の子と同じようにボーっと行列を見ている。

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何が起きているのかわからないのか、
いやミャンマーの生活には仏教が根付いているから、
分からないはずもないのだが、ただ指をくわえながら見ているように、
ボーっとみているのか特に印象的だった。

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その横を袈裟を着た小学生ぐらいの修行僧が、
行列の様子を見ながら、たんたんと歩いている。
やはり普段着を着ている子供たちとの行列を見る目つきは違い、
彼らは式そのものを理解しているようだった。

帰国後、調べましたが、この「コウゾウ式」と思っていたものは、「得度式」とうものだったようです。 多少国によって、解釈は違うようですが、いくつか調べてみると、ミャンマーにおいては3歳になると一度1週間ほど出家するそうです。あくまで通過儀礼なので、本格的なものではないようで、おそらく本人もあまり分かっていないのだと思います。3歳では宗教(仏教)について理解できるはずはないとは思いましたので、1週間の通過儀礼で出家するということで理解できました。

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ニャンウーの村の中まで追いかけて行ったが、
ただずっとそのまま練り歩いていくようだったので、
ゲストハウスへ引き返し、
せっかくなので、のりさんとポッパ山へ行くことにした。

謎の復旧作業

ポッパ山へは片道でも往復で1台25ドルということだった。
2人乗っても同じ料金だったので、同行することにした。
カローラはまずニャンウーで給油する。
町の中を出てからは舗装されたアスファルトの道を快走していく。

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周辺は明らかに植林されたのがわかるように、
草や雑草が生えていない土の上に、規則正しく木が立ち並んでいる。
その横には必ずといっていいほど、
ミャンマーの国旗と日本や韓国などの国旗がはいった看板が掲げられ、
先進国の植林事業ということが一目で分かるようになっていた。
軍事政権というミャンマー事情から
政治外交のレベルではほとんど付き合いがないようだが、
こういう援助レベルではどんどんミャンマーは受け入れているのがみてとれる。
そうでもないと綺麗なアスファルトの道の快適さはミャンマーの
経済事情からしても納得できないところもあった。

ニャンウーの村から15分ほど走り始めたところだろうか。
突然運転手がスピードを落としはじめた。
前方を眺めると、アスファルトの道路が突然消えている。
中心部だけアスファルトで舗装されていて、田舎部分の道路は土のままなんてことは、
アジアではよくあることで、特に驚きはしなかった。
しかしよく見れば、土の道の先には、再びアスファルトの道がつながっているようだった。
ここは工事中の区間なのだろうか。

運転手は躊躇することなく、おもいきりよく未舗装の道の中に車を突っ込んでいった。
案の定、半分ほどは車輪はすべりながらもなんとか進んでいったのだが、
轍(わだち)の間にもりあげられたやわらかい砂の上に、車体が乗り上げて、
タイヤは空回りして車は止まってしまった。

聞くところによると、先週の台風の影響で、
この周辺が川と化してしまい、道路がながれてしまったようである。
なるほど、この先にはしっかりとアスファルトの道がつながっていたので、
不思議には思っていたのだが、もともとアスファルトの道があったのだろうか。
これだけ綺麗さっぱりなくなるというのもおかしい・・・
もともと水の流れ道になっていて、道路などつくっていないのだろうか。

車はタイヤが空回りというよりは、
車体自体が砂の上に乗り上げて、タイヤがほとんど砂をかんでいない。
すると遠くから、ミャンマー人が10人ぐらいやってきた。

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スコップをもっていたから道路工事をしていたのだろうか、
それともこういう事態を想定して、配置されていた人なのだろうか。
車体が乗り上げた部分の土を除去して、数人でいっせいに車を押し始めた。

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車体を押し、車は進み始めるが、もちろんすぐに車は止まった。
どうみても車の真下部分だけ取り除いても、勢いのない状態では、
盛り上げられた土をめがけて車は突っ込んでいるようなもの。
同じことを5回ほど繰り返して、結局車はほとんど進んでいない状態。
ミャンマー人には学習能力というものはないのだろうかと疑うほど単純。

進む先の土をどうにかしないと・・・
見かねてスコップを借り、この先止まりそうな部分の土を、自分でどけ始めた。
確かに車を動かすには時間がかかるが、一度動いてしまえば後は車は止まらないはず。
なるほどと思ったのか、ほかのミャンマー人も同じように、
先にある盛っている部分の土をどけ始めた。

灼熱の太陽の下、ミャンマー人といっしょに、スコップで道路の土をかき分けている。

ある程度、いけそうだなというところで、
車を押してあげると、そのまま車はアスファルトのところまで、一気に進んでいった。

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一度はほんとうに抜け出せないかと思っていたときもあった。
この先何とかなったという安堵感と、
この砂の道を脱出できた達成感でいっぱいだった。
もちろん土かき作業をしていた彼らもほっとしたようだった。
助けていただいた彼らにポケットにしまっていたキャンディーを渡し、
お礼を言って進んでいった車に戻っていった。

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しかし、車を再出発する段階になって、
運転手は彼らのひとりに何かを渡しているようだった。
それがなんだったのかは、分からなかったのだが、
しかしお金以外には考えられない。
これはそういう商売なのか・・・
この後、同じような車が来れば同じように砂かきをするのか・・・
真相がわからないがわからないだけに謎が深まるだけだった。

そして帰りも同じ道を通ったときどうなるのかという、
不安感と期待感を胸に、車はポッパ山に向けて快走していた。

ポッパマウンテンリゾート

ニャンウーからのまっすぐの道を左に折れ、
しばらく走るとだんだんとカーブが増えてきて、
だんだんと坂を上り始めてきた。
まわりの木々の様子も少しずつ変わってきて、
たくさんの葉をたずさえた落葉樹が目立ち始めてくる。
大きな木の下には、木で作られたの台があり、
休憩するミャンマー人もちらほらみられる。
標高があがってきたのだろうか、
少しひんやりとした空気が窓からはいってくるようになってきた。

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小さな町を抜け、細い山道をあがっていくと、
このエリア唯一のリゾートホテル、
ポッパマウンテンリゾートに到着した。
なぜここに来たのかは、のりさんが宿泊するためによったのだが、
きちんとレセプションもあり、綺麗なプールもある。

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眼下にはこんもりとした「タウン・カラッ」も眺望でき、
なかなかよいホテルそうだった。

のりさんがチェックインをしている間、
フロントでぶらぶらしていると、
日本人らしき親子(母と娘)が声をかけてきた。
ちょうどバガンへ行きたいのだが、アクセスの足がないので、
タクシーでいっしょにバガンへ帰って欲しいとのこと。
まあ、そんなことはお安い御用なのだが、
なんせ15時までにバガンに戻りたいらしいのだが、
こっちも今ついたばかりだったが、
ここで昼食をとって帰りに「タウン・カラッ」を観光して、
いっしょにバガンへ戻ることになった。
そのことを運転手に伝えると特に何も言わずに了解してくれた。
もともと来るときも1台25ドルという計算だったので、
この時は何の問題もないと思い、交渉しておくのを忘れたのが、
後々のもめる原因だったのだが・・・。

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レストランからはとても眺望もよく、
標高が高いせいもあるし、そよ風がふいて涼しく気持ちがよい。

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奮発して海老カレーを注文。
注文してから少し時間がかかったが、
味もさることながら、想像以上に大きなぷりっとした海老で、
ボリュームも満点。
さすがホテルの食事だけあって、大満足だった。
昼食後、再度、のりさんとは別れ、
日本人親子と3人でタウンカラッに向かった。

タウンカラッ

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タウンカラッは見るからに異様な形をしている。
ちょうど台形のよう形をしているのだが、
話によれば、その昔、ポッパ山が噴火したときに、
山頂部分がそのままの形でぽつりと落ちてたらしい。
さすがにそれは伝説の類だとは思うけど…
そしてそのまま信仰の山として、
現在のようにタウンカラッの頂上に寺院がたてられている。

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彼女たちは昨日訪れていたので、ふもとで待っているということで、
ひとりで階段をのぼりはじめた。
階段はかなり急につくられていて、
休み休みいきたかったところだが、
二人を待たせていたので、自然と足早になっていた。
どっちみち参道の売込みが今までに比べうるさいので、
あまりゆっくり歩く気にもなれなかったのだが。

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結局ほとんど休むことなく、頂上に到着した。
頂上には寺院が乱立している。
ここからながめる景色は綺麗だったが、
見えるものはポッパ山以外何もなく、
ただ大地が広がっているという程度だった。

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自分の中で急ごうと思っていたので、
あまりゆっくりしようとしていなかったのが悪かったのか、
思ったより良い場所ではなかったように思う。
参道の売り込みもうるさかった。
とにかく頂上に着いて、一番最初に見た仏像の横で、
若い兄ちゃんに「ギブミードネイション」と言われテンション下がって、
気乗りしなくなった。

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観光客といえば、一人の日本人女性と出会っただけ。
日中の暑い時間ということもあったが、閑散としていた。

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ゆっくりせずに、そのまま階段を下りると、
タクシーの周辺には誰もいなかった。
周囲の露天を少し眺めて歩いてみると、木材を販売している店がありました。

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ミャンマーの女性や子供たちが顔に塗っている日焼け止めの原料です。
タナカという日本人っぽい名前の木ですが、この樹皮をすり潰して、
水を加えてペースト状にして塗ると、日焼け止めになるそうです。

すると彼女たちは「え~もう帰ってきたの?」と驚いていた。
確かに時間にすると往復して20分ちょっとで戻ってきた計算になる。
それにしてもふもとのお店も閑散としている。

タクシー運転手と揉める…

タウン・カラッを出発し、3人で会話をしながら、
先に彼女たちの泊まっている「ティリピセヤ・サクラホテル」に立ち寄った。
あまりにも豪華そうだったので、少しだけ中に入ってみることにしたのだが、
いきなりフロントの入口でドアをあけて、
冷たいタオルのサービス、エアコンもがんがんきいている。
フロントを抜けるとエーヤワディー川が一望でき、プールもあった。
特に追加料金は発生しないという認識だったので、お金をもらうのは断っていたのだが、
あくまで割り勘にしましょうということで12ドルを受け取り、
彼女たちとはここで別れた。

最後に自分のゲストハウスに到着。
お金を払うときにひと悶着・・・というより完全にトラブル発生。
運転手に25ドルとホテルへの遠回り分含めて自分で5ドル渡したが、
これではたりないという。
完全に唖然だった。
彼は彼女たちが乗ってきたのだから、余分に25ドル払えという。
そしてそのことは彼女たちに話をしてあるという。
それでさっきお前は彼女たちからお金をもらっていただろという。
おいおいそれは割り勘した分の金だ。
しかし説明してもいっこうに折り合いが付かない。
完全にいい争い状態だった。

いっこうにタクシーがでないことをおかしいと思った、
日本語堪能な従業員がやってきて仲介にはいるが、
運転手はちゃんと彼女たちに言ったと言い張り、
そうなってくるとこちらに歩が悪いようになってきた。

ミャンマーについてから良いことばかりで、少し気がゆるいんでいた。
きちっとポッパ山を出るときに追加料金を確認しておくべきだった。
心の奥で確認しなければとは思っていたが、
まあ「ミャンマーはいい人ばかりだし大丈夫」という気持ちだったので。
それでも完全にこちらが悪いということではなかったので、
追加料金はいらないはずだと主張していると、
タクシー運転手と日本語堪能な従業員が、
彼女たちから貰うと言い出しタクシーに乗りこもうとした。
これはまずい。すぐに自分が払うとタクシーを制止した。

彼女たちが15時までにホテルに戻りたかったのは、
先日バガンに滞在したときに、川沿いに住む現地の貧しい子に、
なんらかの援助をして、そのお礼を現地の子が何かしらしたいとのことで、
再び15時すぎにホテルにやってくるからだった。
おそらく感動的な再会をするに違いない。
そんな中に運転手がお金を払えととりにいったらどうなるだろう。
それを考えると、僕がここで払う代償のほうが小さい気がした。
かっこいいことを言うつもりもないが、
どっちみち自分はここで嫌な思いをしているし、
彼女たちが嫌な思いすることに比べれば・・・。
すでにノリさんから13ドルもらっているので、
自分が払う分は25ドル・・・
ひとりでポッパ山へいったと思えばたいした出費ではない。

新たに20ドル渡して、運転手は去っていった。
部屋に戻る気にはならず、しばらくゲストハウスの前のベンチで、座り込んだ・・・。
だまされたのか・・・確認不足だったのか・・・
考えればきりがないし、当然答えもでない。
彼女たちは良い想い出だけをもってミャンマーから帰国するのだから…
なんだか自己満足になってしまったが、ひきずっても仕方がない。

気持ちを切り替えて、自転車でバガンの夕暮れを見に行くことにした。

土産売りの心

バガン観光のための自転車レンタル料は1日700チャットで日本語で約70円。
昨日の夕陽を見に行っただけのために5ドル払ったのと比べると、
タクシーと比べものにならないほど安い。
日本語堪能な従業員から昨日と違う夕陽スポットを聞いてから、
オールドバガンへ向かった。

ゲストハウスのあるニャンウーから、
遺跡のあるオールドバガンへは地図上で5キロほどあり、
少し遠いかなと思っていたが、太陽もだいぶ傾きかけていたので、
涼しくて気持ちよくサイクリングすることができた。
ただ問題なのが、ミャンマー人はほぼ立ちこぎに自転車にのためか、
自転車のサドル(椅子)の部分が壊れていて、高さ調節ができず高いままなのだ。
慣れていないので思った以上に力が入らず、上り坂のときはかなり疲れる。

目的の寺院は、あまり有名な場所ではないらしく、
ガイドブックの地図ではわからない。
日が暮れるまでまだ時間があったし、
なんとなく上まで登れそうで、夕陽が見れそうなティーローミィンロー寺院を訪れた。

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中にはいると大きな仏像が出迎えてくれる。
バゴダの内部は太陽の光だけなので、日中でもほとんど比較的暗い。
今まで見た中の仏像と比べても、明るさのせいもあるが、
落ち着いて見えるのは気のせいだろうか。
仏像自体は決して古いものではないのだが、
その仏像の表情がそう感じさせていたのだと思う。

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バゴタはほとんど正方形で作られていて、
内部もほぼ同じように作られている。
仏像も同じように置かれている場合が多かった。
それぞれの仏像は少しずつ表情や姿勢が違うのだが、
ぐるっとまわってくると、少し迷うような錯覚がある。

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内部には古い壁画が描かれている。
ただ自然と劣化したのか、人が触わって劣化したのか分からないが、
かなり保存状態が悪く、描かれた部分がやけに剥がれている。
現に安易にすぐ目の前に触れる状態にあり、
もしかしたら人の手が加えられているのかもしれない。

その壁画を見ていると、ひとりのミャンマー人男性が声をかけてきた。
最初は壁画を見ながら、絵のことを少し説明して、
「この絵をみてどう思う?絵は好きか?」と聞いてきた。
最初その男性は、遺跡のことを説明している従業員かと思ったのだが、
「この絵は良い、絵は好き」と答えると、
自分は絵を描いているので、良かったら見ていかないかという。
バガンというミャンマーで一番の観光地に来たことで、
物売りもだいぶしたたかになってきたようだ。
勝手に絵を床に広げ出したが、
こういう絵は元がすべて同じで、後は色付けだけを自分でするという。
確かにみやげ物としては悪い絵ではなかったが、
もともと興味もないので、勝手に絵について説明し続ける彼をほって、
バゴダの外へ出てきた。

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結局、夕陽を見れるような場所も、階段もなかったのだが、
入口の売店のおばちゃんに聞いてみると、
向かいにあるバゴダなら階段であがれるという。
その売店でレモンソーダを飲みながら、休憩していて、
自分が日本人だということがわかると、
簡単な日本語が知りたいらしく、しばらく付き合うことにした。
「冷たい」「水」「数字」などなど・・・
商売上に必要なことを知りたかったようで、
最初はいなかった家族まで登場してきた。

ザガインヒル頂上でコーラを買ったときのように、
ここのおばちゃん含めた家族とのやりとりは楽しかった。
普通の土産屋に比べると、売店だと商売もしつこくないし、
わりとフレンドリーだったりするので、
休憩するときはベンチつきの売店で水分補給することにした。

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夕陽がみれるというバゴダには、
何台かの自転車がとまっていた。
この時間にとまっていて、1階付近には誰もいないのであれば、
おそらくここなのだろう。
バゴダはそれほど大きなものではなかったので、
かなり暗い小さな階段はすぐに見つかった。

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エーヤワディー川を望むことができたが、
周辺にはあまりバゴダがなく、少し期待はずれの場所だったが、
あくまで穴場ということで教えてもらったわけで、
人が少なくゆっくり眺められるのは良かった。

ほかに見物客といえば、 日本人女性と現地人女性の二人組みだけ。
ガイドつきツアーできているのだろうか、それとも友達?
ふたりとも会話をせずに、夕陽が沈むのを待ち続けていた。

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30分近く待ってはみたが、この日も夕陽は厚い雲の中に消えていった。

行き先の見えない真っ暗な階段を降りると
懐中電灯の明かりで階段を照らしてくれた。
さっき日本人女性といたミャンマー人女性だった。

すると別のミャンマー人男性が絵を広げて、
さっきの日本人女性にしきりに商売をしていた。
なんだそういうことなのか・・・。
よくは見ていないがさっきと同じような絵を売っている。
日本人女性に「がんばってね」と声をかけたが、
「まったく買うつもりないんだけどね」と。
バガンにいる間、絵の値段を一度も聞かなかったのだが、
それだけの時間を費やしてまでの儲けになるのだろうか。

結局その日本人女性は絵を買わなかったのだろう。
手ぶらで自転車に乗り去っていった。
その後に絵を売り込んでいたミャンマー人二人がでてきた。
しかし、その顔に悲壮感などまったくなく、
「あ~今日も売れなかったね~」という程度のものだった。
二人はこちらを見つけたが、特に売りつけにもこずに
「バイバイ」とこちらに笑顔で声をかけて、
自転車であっという間に去っていった。

この二人にとって絵を売るということは、
本当に商売なのだろうか。
ただの小遣い稼ぎなのだろうか。
それにしてもミャンマー人の心を探ると分からないことが多い気がする。

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しばらくは道沿いで、暗闇につつまれていく景色を見ていたが、
昨日同様、空に浮かび上がるバゴダの稜線はやはり美しかった。

騙されて…シュエズィーゴォンパゴダ

昨日の夜に行けなかったライトアップされたシュエズィーゴォンパゴダを見に行こうと、
暗くなっていた参道の横に自転車をとめて、
中に入っていこうとしたが、土産物やのおばちゃんに、
「もうしまっている」といわれ、
「こっちに見えるところがあるよ」と言われ、素直についていった。
しかし確かに見えることは見えたのだが、
仏塔の先が少し見えた程度。
せっかくライトアップしているのに、見えないなんて。

結局、もうパゴダが見れないだったらと、
参道にあるおばちゃんのみやげ物屋を見に行くことにした。
この時は本当に土産を買おうと思った。
旅も折り返し地点だし、まがいなりに見えるところに連れて行ってもらった。
しかし、その土産を見て少し唖然とした。
自分にとって良いと思えるのがまったくなかっただけでなく、
なんとなく古くささが手にとって見える。
閉店間際だったらしく、向こうも必死にすすめてくるが・・・
そんな中おばちゃんがしていたうちわに目がとまった。
「それ頂戴」と。
少し困惑したようだったが、いきなり「2ドル」という答えが返ってきた。
どうみても高いだろよ・・・
結局、あっさり値下がり「1,000チャット」。
これでも高いはずだが、もう値切るのはやめた。
もともと売り物でもないし、本当に自分で欲しいものだったから。

小さな子供がいたので、キャンディーをあげると、
私も欲しいという。
まるで小さな子供がダダをこねるようだった。

再び自転車にのりゲストハウスを目指すが、
ほかにもライトアップが見れる場所がないかと思い
探していると別の入口があることがわかった。

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そして人の出入りが多く、参道の店もまだ空いている。
その奥をのぞけばライトアップしているが見えた。

「だまされた」

まあ騙されたといっても、特に自分に被害はなかった。
ただこうして寺院に入れたからいいようなものの
このままゲストハウスに帰っていたら、
騙されたといえるのかもしれない。

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先ほどの参道の入口は、日中はあいていたのだろうか。
よく考えてみれば日中あいてたとしても、
入口が閉まってからもしばらく土産物屋が
営業していること自体おかしい。
自分のように騙されてそこで買う人が多いということなのか。

結局シュエズィーゴォンパゴダ寺院を見てまわったときも、
騙されたような騙されていないようなものだったが、
いい気分ではない出来事が続いた。

参道にはいくつも仏像にはるための金箔を売る店がある。
2cm平方の小さいものを3つほどセットで売っていて、
値段も安かった購入した。
するとどこからとなく40歳ぐらいの女性が現れ、
ちゃんとお参りする順序があるから教えてあげるという。
今日の出来事からして少し疑ってはいたのだが、
ミャンマー人の仏教に対する思い、
ミャンマー人の親切さを信じてみることにした。

2つの仏像に案内され、お祈りする方法も教えてもらった。
最後には、わざわざ鍵を開けて、
一番大きな仏塔の横にある仏像に案内してもらい
「家族の中で、病気や怪我をしている人がいたら、
その人の悪い部分と同じ場所に金箔をはると良くなるという」。
ちょうど心当たりがあったので、金箔を貼り、お祈りをした。

もう3枚の金箔もなくなって、これで終わりだといわれたので、
あとはゆっくり寺院の中をまわろうと思ってその場を立ち去ろうとすると、
「案内したのだからお礼にお金をくれ」と言う。
もともと半信半疑の中で案内してもらっていたが、やっぱりがっかりだった。
確かに案内してもらったのだからお金を払うのは当然なのかもしれないが、
最初に言うべきであって、後から言うのは違反行為。
この手のことは以前訪れたアンコールワットは日常茶飯事のように行われていた。

しょうがないので1,000チャット(約100円)を渡すと、
「少ない、日本人はお金持ってるから欲しい」という。
もう当然払う気はないのだが、お金を渡したところを見ていたらしく、
周りからも3人ほど女性がやってきて、「私にも欲しい」とか言いだす。

霊験あらたかであろう寺院内でこんなことがおこなわれていいのだろうか。
ただ残念でならなかった。
漆黒の中に浮かび上がる輝くシュエズィーゴォンパゴダの前で、
彼女たちはあまりにも、悲しく暗い存在のように思えた。

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この日の後半からすべて空回りしたような気分だった。
ただそれはほんの一部の人間の悪意であり、
他の国の騙す行為と比べれば、
悪意と呼べるほどの行為でもないことも事実。
(タクシーの件は悪意であれば正直痛い金額だが)

ひとり旅をしていると、騙されないようにと肩肘を貼りすぎると、
本当に親切な人の好意も受けられなくなり、また現地の人々と接することもできずらい。
かといって、楽天思考でいくと、騙され不快な思いをする。
でも、ひとり旅ってよっぽどのトラブルや金額で騙されることでもなければ、
それ自体も「旅の調味料」として楽しむ余裕がないとはいけないと思う。
騙されまいと緊張感をもったまま旅をしていたも楽しくはない。
そのあたりの旅先での人に対する接しかたのバランスは
ひとり旅の永遠のテーマなのかもしれない。

ただ今日の場合、自分がミャンマー人に対してあまりにも良いイメージを
持ちすぎていただけなのかもしれない。

夕食は昨日訪れた同じミャンマー料理屋に足を運んだ。
さすがに昨日の今日だったので顔を覚えていたらしく、
昨日こちらが覚えて話していたミャンマー語を投げかけてきた。
一人での夕食だったが、ビールを飲みながら、
楽しい時間を過ごし、寝床についた。