とにかく明るいと目が覚めてしまう体質。外はすでに明るかったものの、まだ太陽は昇っていないようだったので、裏手の海まで足を運んでみました。前夜の花火のあと、そのまま海辺で過ごしていたらしい若者の姿がちらほら。

到着して数分後、東の空から太陽が顔を出しました。ああ、今日も暑くなりそう。
それより気になっていたのが胃の調子。二日酔いになることはほとんどないのですが、明らかに胃がもたれている。原因は昨晩のカップラーメンとスナック菓子で間違いなし。いつもならそのまま朝の散策を続けるところですが、この日は無理をせず、集合時間の9時までホテルで休んでいました。
昨日はかなりの強行軍でしたが、今日は比較的ゆとりのある行程。予定として決まっているのは別府観光と、19時前の新幹線で友人が博多駅から帰路につくことくらい。

9時に出発するため、向かいのトキハ百貨店へレンタカーを取りに向かいます。時間的にはすでに猛烈な暑さになっていてもおかしくないのですが、日差しは強いものの空気はどこか涼しげ。以前見たときはピンク色でかなり異様な雰囲気だった別府タワーは、いつの間にか真っ白になっていました。確かにあのピンク色は少し怪しげな雰囲気もありましたが、あれはあれで別府温泉らしい味があって良かった気もします。
海地獄
まず向かったのは、別府温泉めぐりの定番「海地獄」。鉄輪温泉エリアは別府駅周辺から少し離れていて、車で坂道を登っていきます。多少標高が高いこともあってか、車を降りると空気が少しひんやり。おそらく30度には届いていなかったと思います。これはかなりありがたい。
別府地獄めぐりは全部回ったわけではありませんが、過去にも何カ所か訪れた経験があります。その中でも、やはり海地獄だけは別格という印象。鮮やかなコバルトブルーの池と、そこから立ち上る白い蒸気。この光景を見てしまうと、ほかの地獄が少し地味に感じてしまうほど。今回も友人を案内したのは海地獄のみでした。

しかも、この日の海地獄は過去に見た中でもかなり綺麗。夏場は気温が高いため蒸気がすぐに消え、池の色がよく見えるのですが、この日は強い日差しも相まって、青色がより鮮やかに際立っていました。
現在の海地獄は立派な観光施設となっていて、土産物売り場などもかなり充実しています。もともとは田んぼの中に突然こんな高温の池が存在していたそうで、昔の住民は扱いに苦労していたのだとか。

ちなみに温泉の色で、ある程度の水温が分かるらしいです。これは微生物の生育状況によるものだそうで、青色の温泉は比較的高温とのこと。
地獄蒸し工房
少し早めの昼食として、同じ鉄輪温泉エリアにある地獄蒸し工房 鉄輪へ。高温の温泉噴気を利用して食材を蒸し上げる、別府らしい体験型の食事処です。
注文を受けてから自分たちで食材を蒸し上げるスタイルのため、どうしても時間がかかるようで、GWなどの繁忙期には数時間待ちになることもあるらしい。夏休み期間の平日でも混雑するという情報を見て、かなり早めに訪問しました

まずは、かまど代として400円または600円を支払い、券売機で好きな食材を購入。準備が整うと、釜番号札と食材、タイマーを渡されます。それを持って地獄蒸し釜へ向かい、代表者が防熱手袋を装着して釜の中へ食材を投入。タイマーが鳴ったら、自分たちで蒸し上がった食材を取り出し、テーブルまで運んで食べるというシステムでした。

正直なところ、食材そのものが特別高品質というわけでもなく、値段も観光地価格。純粋にグルメ目的というより、「別府ならではの体験」として楽しむ場所という印象です。お肉はかなりしっかり冷凍されていて少々残念でしたが、蒸気で蒸し上げた野菜はかなり美味しい。素材の良い食材を使ったら、相当レベルの高い料理になりそうな気がします。
ホテルの温泉が思ったほど好みの泉質ではなかったので、どこか日帰り温泉にも立ち寄りたい気持ちはありました。ただ、友人たちは特に温泉へ入る気分ではなかったようで、それどころか「別府に来たのにホテルの温泉すら入っていない」という事実が判明。旅に求めるものって、本当に人それぞれです。
その結果、急に時間に余裕ができました。せっかくなので、以前から少し気になっていた明礬温泉方面へ足を伸ばしてみることに。高速道路よりさらに山側にあるエリアで、湯の花の採取でも知られています。おそらく泉質もかなり良いのでしょう。

湯の花小屋の内部を見学できる施設もありましたが、入場料が200円必要とのことで、そこまでの熱量はなく今回は見送り。ちなみに「湯の里」という施設では、湯の花小屋を無料見学できるらしいです。

その近くには、地獄蒸しプリンで有名なお店も。せっかくなので、おっさん3人でプリンを食べてから別府温泉をあとにしました。
プリンの味については、普段あまりプリンを食べないので細かい比較はできませんが、普通に美味しい。店内はほぼ満席で、その半分以上はインバウンド客だった印象です。
さて、まだ午前中。
湯布院温泉へ行くなら、ぜひ立ち寄りたい場所
さらに個人的に行きたかった場所が、湯布院温泉の手前にあります。湯布院は大分を代表する温泉地ということもあり、友人に「たぶん期待すると微妙だと思うけど、湯布院の雰囲気だけでも見に行ってみる?」と聞いてみると、これは意外にもあっさりOK。
やはり「湯布院温泉」というブランド力はかなり強いですね。個人的にはそこまで良い印象を持っているわけではないのですが、なぜここまで人気が高いのかは少し不思議なくらい。
本来なら高速道路を使ったほうが早いのですが、かなり大回りになるため、そのまま下道で向かいます。というより、途中に個人的に立ち寄りたい場所があるからです。

県道11号を南下し、湯布院方面へ。別府温泉を見下ろす鶴見岳の南側を過ぎたあたりから、景色の良い「やまなみハイウェイ」区間に入ります。ここは何度通っても気持ちの良い道。前回は新緑の季節でしたが、深い緑に包まれた真夏の景色もまた素晴らしい。

由布岳の南側を過ぎたところで、「ミルキーウェイ」と呼ばれる脇道へ入ります。普通車同士の離合も難しいほどの細道をしばらく進むと、車を寄せられそうなスペースが出現。そこで車を停め、振り返った瞬間に広がる景色が本当に見事です。
目の前には由布岳、その裾野から広がる雄大な山麓風景。視界いっぱいに広がる緑の景色は、まさに絶景という言葉がぴったりです。
この場所は道が狭いためか、観光ガイドなどではほとんど紹介されていません。Googleマップでは「狭霧台上展望所2」という名前で登録されていますが、正直、普通の展望所よりこちらのほうが圧倒的に印象的でした。
湯布院温泉の魅力は何なのか

再びやまなみハイウェイへ戻り、ヘアピンカーブをいくつも下って湯布院温泉へ。観光客が集まる中心地「湯の坪街道」へ車で入ってみたのですが、その瞬間、あまりの人の多さに驚かされました。
とても普通に走れる状況ではなく、人混みをかき分けるような状態。おそらく、この雰囲気を見ただけで「思っていた湯布院と違う」という感覚は伝わったはず。それでも、せっかく来たので少し歩いてみることにしました。

見渡す限り観光客だらけで、体感では7割以上がインバウンド客。その中でも大半はアジア圏からの旅行者という印象です。
湯布院温泉と聞くと、「静かな山あいの温泉地」というイメージを持つ人も多いと思いますが、今の湯布院はかなり違います。湯の坪街道の両側には、食べ歩きグルメや土産物店がびっしり並び、通りは常に観光客で大混雑。正直なところ、温泉街というより巨大観光地という雰囲気でした。

10年以上前に初めて訪れたときは、「軽井沢をもっとコンパクトにしたような場所」という印象だった記憶があります。しかし現在の状況は、むしろバブル期の清里を思い出させるような空気感。もっとも、今の若い世代には清里ブームそのものが伝わらないかもしれませんが。
だからこそ、もし再びコロナ禍のような事態が起きてインバウンド需要が急激に消えたら、一気に空き店舗だらけになってしまうのでは……という不安も少し感じます。
ただ、湯布院そのものを否定したいわけではありません。
もともと湯布院は、田園風景の中に広がった比較的新しい温泉地。大型旅館街というより、一軒家のような独立系の宿が点在しているのが特徴です。こだわりの強い高級旅館や個性的な宿も多く、評価の高い宿泊施設が集まっている印象があります。
確か「玉の湯」がその流れを作った代表的な存在だった記憶。お気に入りの宿があって滞在を楽しむ場所として考えると、また印象はかなり変わるのかもしれません。逆に、宿泊せずに温泉街だけ歩くと、「有名観光地」という側面ばかりが強く見えてしまう気がします。
九州で一番暑い町へ
さて、湯布院はこんな感じだったので、まだかなり時間に余裕があります。新幹線の切符は割引きっぷで購入しているため、時間変更は不可。
そこで「進撃の巨人ミュージアム、興味あります?」と聞いてみると、ひとりの友人は「時間があるなら行ってみたい」とのこと。自分も以前この場所には来たことがあるのですが、そのときは開館前。せっかくだし見てみようかなとも思っていました。

ただ、実際に現地へ到着すると、なんとなく「まあ見なくてもいいか」という気分に。結局、入館しないKとふたりで、エアコンもない日陰のベンチに座って待っていました。
しかし、これがとにかく暑い。
さっきまでいた湯布院周辺とは別世界のような暑さです。近くには川も流れているので多少は涼しいかと思いきや、まったくそんなことはない。じっと座っているだけでも汗が噴き出してきます。
進撃の巨人ミュージアムがあるのは、大分県日田市。九州内陸部の盆地に位置する町で、夏になると高温でニュースに登場することも多い場所です。2018年には39.9℃を記録しており、これは九州の歴代最高気温記録らしい。
そして、このときの日田市の気温表示は36℃。ほぼ体温と変わらない数字です。
つい先ほどまで、「今日は意外と涼しいな」と感じていた大分県東部から移動してきただけに、この気温差はかなり堪える。まさに“九州で一番暑い夏”を体感しているような感覚でした。

日田には、江戸時代に天領として栄えた頃の町並みが残る豆田町というエリアもあります。白壁土蔵の建物が並ぶ風情ある場所なのですが、さすがにこの暑さでは歩く気力もなく、車で軽く通り抜けただけで終了。
再び高速道路へ入り、博多駅のある福岡市へ向かいます。
昨日と同じ道を走っているはずなのに、今日はまるで別の季節のよう。照りつける太陽と熱された空気が凄まじく、エアコンの効いた車内にいても、外の熱気が伝わってくるほどでした。
旧志免鉱業所 竪坑櫓
最後に立ち寄ったのは、博多駅からもそれほど遠くない場所にある産業遺産。
住宅地の中を走っていると、突然巨大なコンクリート建造物が姿を現します。想像していたよりはるかに大きく、思わずテンションが上がりました。
訪れたのは、旧志免鉱業所竪坑櫓。

高さは47.6m。地下430mまで伸びる垂直坑道を持ち、かつてはここで炭鉱夫の昇降や石炭の搬出が行われていました。完成したのは1943年で、戦時中に建設された鉄筋コンクリート製の巨大竪坑櫓として知られています。
1964年の閉山後は使われなくなりましたが、保存状態はかなり良好。もっと荒廃した廃墟のような雰囲気を想像していたのですが、周辺は公園として整備されていて、地域のシンボルとして大切に保存されていることが伝わってきました。

近くまで行くと、そのスケール感は圧倒的。無骨なコンクリートの塊が空へ向かってそびえ立つ姿は、どこか要塞のようでもあり、炭鉱全盛期のエネルギーを今に残しているような迫力があります。
福岡県には筑豊地域を中心に多くの炭鉱が存在し、かつて日本有数の石炭産地として栄えていました。その石炭を運ぶため、北部九州には網の目のように鉄道路線が整備されます。
現在でも福岡県北部に鉄道路線が多く残っているのは、その炭鉱輸送の歴史の名残。いまはローカル線のように見える区間も、かつては大量の石炭と人を運ぶ重要路線でした。

なお、この竪坑櫓は日本国内に現存する数少ない本格的な炭鉱竪坑施設のひとつで、国の重要文化財にも指定されています。産業遺産に興味があるなら、かなり見応えのある場所だと思います。
博多
レンタカーを返却する前に、セルフスタンドで給油。給油中、西日が真正面から照りつけてきたのですが、とにかく熱い。短パンから出ていたふくらはぎがヒリヒリ痛むほどで、今日一日の暑さを最後まで思い知らされました。
そのまま博多駅方面へ向かう途中、福岡空港のすぐ横を通過。道路は渋滞していて思ったより時間はかかりましたが、「空港が近い」という意味は一瞬で理解できました。
福岡空港から博多駅までは地下鉄でたった2駅。しかも中洲や天神へもそのまま直通です。これだけの規模の都市で、ここまで市街地に近い空港はなかなか見たことがありません。
アジア圏からの観光客が多い理由も、実際に見ると納得。特に韓国あたりだと、本当に国内旅行感覚で来られる距離感なのでしょう。昨年、中洲周辺を歩いていたときに韓国人観光客をかなり見かけましたが、空港の立地を体感すると「そりゃ来やすいよな」と妙に腑に落ちました。
人を集めるという点で、福岡市にとってこの空港立地は圧倒的なアドバンテージなのだと思います。首都圏とも海外とも短時間で結ばれ、さらに九州新幹線の開業によって、鹿児島中央から最速75分、熊本からも40分台でアクセス可能になりました。
人口減少が進む日本の中で、福岡市だけはかなり特殊な存在。外国人を含めた人口増加率が全国上位になったこともあり、特に若年層の流入が多いらしい。大学や企業が集まり、「地方都市なのに勢いがある」という独特の空気を感じます。
考えてみれば、古代からこの地は大陸への玄関口。グローバル化が進んだ現代で再び存在感を増しているのは、ある意味自然な流れなのかもしれません。
……と、完全に話が脱線しました。
鶏皮
無事レンタカーを返却し、夕食を求めて博多駅隣接のKITTE博多へ。飲食フロアには博多名物の店が集まっていて、観光客にはかなり便利です。
今回は「まずは軽くつまみ」ということで、博多とりかわ大臣 KITTE博多串房へ。

とにかく暑かった一日でしたし、これで運転業務も完全終了。そんな状態で飲むビールが美味しくないわけがありません。ジョッキがかなりのハイペースで空いていきます。
そして、博多名物の鶏皮が想像以上に美味しい。
表面はパリパリなのに、中は脂がじゅわっと残っていて、噛むたびに鶏の旨みが広がる感じ。これなら専門店が成立するのも納得です。
もっとも、鶏皮という食材の原価を知っていると、1本165円はなかなか強気な価格設定にも感じますが、それでも次々注文してしまうあたり、完全に術中にはまっていました。
リスタート
友人を見送り、今晩の宿であるキャビナス福岡へ向かいます。

それにしても、博多駅のコンコースは相変わらず人だらけ。平日とは思えないほどの賑わいです。外はまだ熱気がこもっていて歩く気になれず、そのまま地下街を経由。地上へ出ると、宿はすぐ目の前でした。
ここは過去にも一度利用したことがあるので、迷うことなく到着。

キャビナス福岡は、大浴場とサウナ設備がかなり充実しているカプセルホテルです。浴場も広く、露天風呂まで完備。それでいて博多駅前という立地が本当に便利で、今回リピートすることにしました。
さっそく日中かいた汗を流し、露天風呂でぼんやり。
まだ19時30分頃ですが、外は意外と明るい。夏の九州らしい夕方です。
風呂上がりですし、本来ならエアコンの効いた館内でゆっくりしたいところ。ただ、どうにも身体が炭水化物を求めています。
考えてみれば、今日は朝昼兼用で地獄蒸しを食べ、その後は鶏皮と焼き鳥をつまみにビールを飲んだ程度。そりゃお腹も減るわけです。
そこで、ホテル前の地下街にある、いつも行列しているうどん屋へ行ってみることに。

訪れたのは、大地のうどん 博多駅ちかてん。
19時30分を過ぎているのに、まだしっかり行列ができています。並んでいる人を見ると、半分以上は東アジア系の観光客という印象でした。

メニューを見ていると、うどんだけでなく天ぷらも人気らしい。券売機で食券を購入し、5分ほど待ってカウンター席へ案内されました。
カウンター越しには厨房が見えるのですが、うどんを打ち、茹で、同時に大量の天ぷらを揚げ続けていて、かなり慌ただしい。人気店らしい活気があります。

運ばれてきたのは野菜天ぶっかけうどん、800円。
色鮮やかな野菜天ぷらが豪快に盛られ、薬味もたっぷり。かなりインパクトのある見た目で、人気なのも納得です。
そして、うどんが普通に美味しい。
しっかりコシがありながら、同時に柔らかさと滑らかさもある独特の食感。これは香川県でも十分戦えそうなレベルです。
福岡なので、てっきり“やわやわ系”の博多うどんを想像して来店したのですが、良い意味で完全に裏切られました。
まあ、柔らかいうどんはまた別の機会に食べればいいでしょう。
さて、明日からはいよいよひとり旅スタート。
同じ旅行なのに、ここから空気感がガラッと変わる感じがして、なんだか一度で二度美味しい旅をしている気分でした。
