46日目。いよいよ帰国へ向けて、メキシコシティーを出発する時が来た。日本への帰国便はロサンゼルス発だが、メキシコシティーからの直行便は高額だった。安さにつられてグアダラハラ発の航空券を予約したため、まずは長距離バスでグアダラハラを目指す。
クアダラハラまで変わらない風景
日本人宿サンフェルナルド館の居心地があまりにも良く、気づけばメキシコシティーに6泊もしていた。出発の朝、何人かに見送ってもらえたのが素直に嬉しかった。

帰る日に限って天気がいいのは、旅行あるあるだろうか。
7月中旬だというのに、放射冷却の影響か朝は肌寒い。
最後に、メキシコシティーが標高2,240mに位置していることを、身体で実感させられた。

地下鉄を乗り継ぎ、ノルテバスターミナルへやってきました。ティオティワカン行きの時に利用した同じバスターミナルです。北方面、西方面へのバスが主に出発します。正式名称はセントラル・デ ・アウトブセス・デル・ノルテ。チケットはすでに手に入れてあるので、購入したADOのカウンターでバス乗り場を聞いて、向かいました。

Primera Plus273便 メキシコシティー08:40→グアダラハラ15:10(6時間30分)
入口で機内食を受け取ります。同じようなバスが出ているのでスタッフに念を入れて確認しました。

中途半端な時間帯だけあって、車内は比較的空いてました。混雑具合によって料金が変動するので、安い時間帯を選んだのですが、これはある意味正解でした。665ペソ=約5,320円
パーソナルモニターに加え、USB充電、機内Wi-Fiまで完備。
メキシコ第1位と第2位の都市を結ぶ路線だけあって競争が激しいのか、これまで乗ったどの路線よりもサービスが充実していた。

メキシコシティーを離れたバスは、高原地帯の真ん中を通る高速道路を淡々と走り続ける。
道は綺麗に整備されていて、アップダウンもカーブも少ない。
揺れはほとんどなく、乗り心地は驚くほど穏やかで、
車内では大半の乗客が心地よさそうに眠っていた。
窓の外に広がるのは、乾いた草原と畑、そして遠くに見える山々。
派手さはなく、シャッターを切りたくなる瞬間もほとんどない。
何時間走っても、山々は遠くにあり続け、
風景は同じ表情のまま、淡々と流れていく。
この感覚は、日本での移動とは少し違っていた。
メキシコの国土は日本のおよそ5倍。
最後に、メキシコの広さを実感させられる、
少し退屈で、しかし印象に残るバスの旅だった。

ヌエバ・セントラル・カミオネラ(Central Nueva)
到着したのは、グアダラハラ東部に位置する
主要な長距離バスターミナル「ヌエバ・セントラル・カミオネラ」。
市内中心部からは離れており、『地球の歩き方』にも詳しい市内地図ではなく、簡単な郊外地図にしか掲載されていなかった。
周囲を見渡すと、下車した乗客の多くは誰かに迎えに来てもらっている様子だった。
空港までの道のり
ここから空港へ向かう必要があるのだが、直行の路線バスはないらしい。
探していると「CENTRO」と書かれたバスを発見。
運転手に空港まで行けるか訪ねると、いったん市内の旧バスターミナルへ向かい、そこからさらに乗り換える必要があるという。

不安だったので一番前の席に座り、地図を見ながら向かうことにした。事前にダウンロードしていた maps.me の地図で位置を確認する。
バスは大通りをまっすぐ進むわけではなく、住宅街を回り道しながら走り続ける。
市内にある旧バスターミナルへ着くまでに、1時間近くを要した。
距離はおおよそ10キロ。
20分ほどで着くと思っていただけに、思った以上に時間を費やしてしまった。
バスチケットオフィスで確認すると、
空港へ直接向かうバスはなく、幹線道路沿いで下車して歩く必要があるらしい。
メキシコ第2位の都市にしては、正直なところ空港アクセスは心許ない。
時間に余裕があれば、グアダラハラを少し観光するつもりだったが、そんな心の余裕はすっかりなくなっていた。

セントロから空港方面へ向かうバスは混雑していたが、空港付近で下車したのは自分ひとりだった。すでにターミナルは見えており、歩く距離としては問題ない。
ただ、異常に暑く感じる。グアダラハラは標高およそ1,500m。メキシコシティーより700m低く、その分、気温は高く25度を超えていた。
朝の肌寒さを想定したままの服装だったため、ほんのわずかな距離にもかかわらず、大量に汗をかいてしまう。これからシャワーなしで、実質2泊過ごすと思うと、気分は一気に重くなった。

グアダラハラ国際空港の出発エリアは、国内線と国際線の区別がなく、
国際線利用の場合はしっかりと出国手続きを行う必要があった。
空港内では、メキシコ国内の聞き慣れない地名が、次々とアナウンスされている。
さすが日本の約5倍の国土を持つ国だけあって、
国内線の航路も豊富なのだろう。
空港にいながら、あらためてメキシコの広さを感じさせられた。

AA985便 グアダラハラ 21:05 → ロサンゼルス 22:39(3時間34分)
チケットはエクスペディアで予約した。預け手荷物1個込みで22,300円。メキシコシティーからロサンゼルスへ直接飛ぶよりも、1万円以上は安い。ただし、長距離バスでの移動を含めると、
実感としてはそれほど得をした感じはしなかった。もともとはグアダラハラを観光してから向かうつもりだったのだから、これは想定内、ということにしておこう。

ロサンゼルスが近づくにつれ、眼下にはいかにもアメリカらしい夜景が広がってきた。
高層マンションが密集するのではなく、点々と続く一軒家の灯り。
車社会の都市らしく、郊外へ向かって無限に広がる住宅地を、
車道に並ぶ街灯の明かりが、一本の光の道として浮かび上がらせている。
他の国の都市で見る夜景とは、密度も、高さも、光の質もどこか違う。
アメリカの街がどれほど車を前提に作られているかが、はっきりと伝わってくる。
無人の空港ターミナルで寝る
入国審査はあっけなく終わった。ただのトランジットで翌日の日本行きのeticketも提出したので、質問することもなかったのだろう。

煌びやかなロサンゼルスの町の明かりとは裏腹に、明日の朝まで出発する便がないため、帰国便が出発する長距離国際線が発着するターミナルB(トム・ブラッドレイ国際ターミナル)は、ひっそりとしていた。業務を終えたカウンターはすべて無人で、広い空間に静けさだけが残っている。
今夜は空港で一泊する予定だったので、この静けさはむしろ好都合だった。人の気配がほとんどなく、少し心細さはあるものの、人の往来が激しくて眠れないよりは、よほどましだろう。

ロサンゼルスはまだ23時だが、メキシコシティーとの時差を考えると、体感ではすでに深夜1時だ。一刻も早く眠りたい。
ベンチよりもカーペットのほうが平らで寝やすそうだと判断し、ここを今夜の寝床に決めた。案の定、グアダラハラでかいた汗のせいで身体はベタつき、頭皮はかゆく、決して快適とは言いがたい。
旅は終わってほしくない。
それでも、一刻でも早くシャワーを浴びたいという気持ちのほうが勝ってしまい、「早く日本に帰りたい」という思いが、この旅の終わりに膨らみかけていたノスタルジーごと、遮ってしまった。



